近代京都の美術工芸
定価
12,100 円(税込)
本体 11,000円
在庫状況: 在庫あり

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近代京都の美術工芸

制作・流通・鑑賞

並木誠士 編

  • 体裁
    A5判上製・608頁
  • 刊行年月
    2019年04月
  • ISBN
    978-4-7842-1938-4

内容

本書は、明治・大正期の京都で制作・流通・鑑賞された絵画、工芸、建築、庭園さらには定期刊行物や書物など広範なジャンルをとりあげて論じることにより、近代京都の美術工芸をめぐる状況の解明を試みる。また、化学者や技術者、パトロンや学者たちなど、美術史の文脈にはこれまでほとんど登場しなかった人びとが、美術工芸家をめぐるネットワークとして浮かび上がる。
いまだ途上にある、近代京都の美術工芸研究を更新し、その作品や資料の評価、位置づけを問い直す論集。

●編者メッセージ●
近代の美術工芸についての研究は1990年代からさかんになるが、それは明治政府=東京での事象の分析が中心であった。美術館・博物館、展覧会といった制度や美術・工芸といった概念が研究の対象となり、つぎつぎと新しい成果が発表された。ところが、美術工芸を伝統的に生み出し、同時に、天皇の東幸という他に例をみない特殊な出来事を体験した京都の近代については、十分な研究の蓄積がなされたとは言えなかった。

そのような状況を打開するために、わたしたちは、2014年から科学研究費の助成を受けて共同研究を続けてきた。その成果が本書である。近代京都の美術工芸を、制作・教育の場、流通の仕組み、鑑賞の方法という3つの立場から論じた19編の論考からなる本書では、これまで紹介されなかった史資料、近年の調査により発見された作品、失われてゆく産業遺産などの分析を通して、伝統的な美術工芸の近代化をめぐる諸相を明確に浮かび上がらせることを目指した。(並木誠士)


【担当編集者より】
京都は美術工芸遺産に恵まれた街ですが、単にもともと恵まれていたというだけではなく、美術工芸に価値を見出し、遺そうという意志のある人々の存在も大きいでしょう。
本論集で取り上げられる近代京都の美術工芸をめぐる事象は、まさにその価値づけの過程にあり、「未来の文化遺産」とは何かを考えるきっかけやヒントになりそうです。

目次

第Ⅰ部 制作
浅井忠とパリ―近代日本における芸術家の転身をめぐる考察(並木誠士)
木島櫻谷の写生縮模帖―近代京都における日本画の学習と制作(実方葉子)
太田喜二郎研究―その画業と生涯(植田彩芳子)
河井寛次郎と京焼の生産システム―登り窯を「受け継ぐ」意味(木立雅朗)
京都における染織工芸の近代化―写し友禅・機械捺染・墨流し染(青木美保子)
水曜会をめぐる考察―竹内栖鳳塾における明治三〇年代後半の新動向(上田文)
『小美術』―その分析と西川一草亭の果たした役割(和田積希)
京都市立美術工芸学校の教育課程(松尾芳樹)

第Ⅱ部 流通
美術貿易黎明期の京都とロンドン―美術商池田清助とトーマス・J・ラーキン(山本真紗子)
谷口香嶠の模写と画譜出版(藤本真名美)
雑誌『時事漫画 非美術画報』にみるカリカチュアと図案(前川志織)
明治期京都における染色デザインの展開―友禅協会応募図案を中心に(加茂瑞穂)
明治期京都における教育機関への海外デザインの導入―図案集を中心として(岡達也)

第Ⅲ部 鑑賞
小波魚青「戊辰之役之図」と明治維新観(高木博志)
雑誌にみる近代京都の美術工芸―黒田天外の『日本美術と工芸』をめぐって(中尾優衣)
京都商品陳列所と明治末京都の美術工芸(三宅拓也)
土田麦僊の画室建設と材木商塩崎庄三郎(田島達也)
武徳殿の建設と国風イメージの波及(中川理)
茶会の場の考察(矢ヶ崎善太郎)

あとがき
索  引
英文要旨
執筆者紹介

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