さいとう・ひでき…佛教大学歴史学部教授
いのうえ・たかひろ…佛教大学総合研究所嘱託研究員
カグラトサイモンノチュウセイ ヘンヨウスルシンコウノカタチ
変容する信仰のかたち
さいとう・ひでき…佛教大学歴史学部教授
いのうえ・たかひろ…佛教大学総合研究所嘱託研究員
「民俗芸能」と呼ばれ、古代以来伝わるものとされる「神楽」。
しかしその中には、牛頭天王や荒神のような異神の信仰が隠されていたし、死霊にかかわる祭儀など、常識的な理解では説明できない様々な形が存在する。
それらの深層を探ると、そこには混沌とした「中世」の信仰のかたちが現れる。
この中世の信仰と思想を伝える「祭文」を中心に、中世神楽および関連する陰陽道・密教・アジアの巫俗の世界を読み解く意欲作。
■担当編集者より■
神楽と聞くと、地方に残された古い信仰の儀式、というイメージが涌きがちです。
しかし、神楽で詠まれている祭文(さいもん)を読んでみると、陰陽道の神様が出てきたり、仏教用語が入っていたり……同じ「神楽」という言葉でくくってしまっていいのか、悩ましいほどにバリエーション豊かです。
じつはこれは、中世の信仰によるものなんだとか。
神楽の実態を見つめ直す、ユニークな論文集です。
総 論 神楽・祭文研究の現在と課題 (井上隆弘・斎藤英喜)
神楽編/祭文編/各章の概説
Ⅰ 陰陽道・密教・中世神話・アジア
第1章 陰陽道祭文の位置―『祭文部類』を中心に―(梅田千尋)
陰陽道祭文の成立と展開/『祭文部類』の神々
第2章 五形祭文と五蔵曼荼羅(阿部泰郎)
―中世日本の宗教的身体論の系譜―
花祭と神楽における「五形祭文」/「五形祭文」の地平/五蔵曼荼羅と五蔵音義
第3章 大土公神祭文・考―暦神たちの中世神楽へ― (斎藤英喜)
『ホキ(※)内伝』のなかの「五帝龍王」譚/奥三河「大土公神経」/いざなぎ流「大どッくの察文(祭文)」
※ホは、竹かんむり+甫+皿。キは、竹かんむり+艮+皿。
第4章 牽かれゆく神霊(北條勝貴)
―東アジアの比較民俗からみる死者の浄化―
浄化手段としての牽引/「指路経」における〈道行き〉の意義
Ⅱ 生成する祭文の世界
第5章 神祇講式を招し祈らん(星優也)
―藺牟田神舞「トウ(※)利の法者、トウ(※)利の小神子」をめぐって―
藺牟田神舞をめぐって/変貌する『神祇講式』/藺牟田神舞における『神祇講式』
※トウは、りっしんべん+刀。
第6章 奥三河の宗教文化と祭文(松山由布子)
奥三河の花太夫と病人祈祷の祭文/『牛頭天王嶋渡り祭文』と津島社/『御歳徳神祭文』と奥三河の疫神信仰
第7章 物語化する祭文(神田竜浩)
―日向琵琶盲僧の釈文「五郎王子」の事例から―
九州の琵琶盲僧と永田法順/五郎王子とは何か?/琵琶盲僧の釈文「五郎王子」/釈文「五郎王子」についての考察
Ⅲ 中世神楽の現場へ
第8章 静岡県水窪町草木霜月神楽に見る湯立ての儀礼構造(池原真)
―「玉取り」と「神清め」―
草木霜月神楽の概要/玉取り/玉取り儀礼の意義
第9章 「浄土神楽」論の再検討(鈴木昂太)
―『六道十三佛之カン文』の位置づけをめぐって―
『六道十三佛之カン文』の所蔵元栃木家について/『六道十三佛之カン文』の儀礼構造/梓巫女の口寄せ儀礼との比較
第10章 いざなぎ流「神楽」考―米とバッカイを中心に― (梅野光興)
神楽の章/神育ての章/バッカイの章
第11章 山の神祭文と神楽祭文(永松敦)
―狩猟祭文の解釈をめぐって―
神楽に勧請され祭られる神々は何か?/神送りと火の神、竈の神
第12章 九州における神出現の神楽と祭文(井上隆弘)
「神体出現の神楽」/九州南部の神出現の神楽/宮崎県の椎葉神楽における荒神と祭文/鹿児島県の藺牟田神舞における荒神と祭文
〔研究ノート〕
青ヶ島における中世的病人祈祷祭文といざなぎ流との関係について(ジェーン・アラシェフスカ) 【プレモセリ・ジョルジョ 訳】
〔資料翻刻と解説〕
対馬の新神供養―「綱教化」と「提婆」を中心として― (渡辺伸夫)
あとがき
『地方史研究』388
2017年8月
受贈図書論文要目
『日本文学』66巻10号
2017年10月
鈴木耕太郎
書評
『日本歴史』834号
2017年11月
薗部寿樹
書評と紹介
『日本民俗学』292号
2017年11月
鈴木正崇
書評