江戸教育思想史研究
本体価格
9,500 円(税別)
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著者・編者略歴

まえだ・つとむ…1956年生.東北大学大学院博士後期課程単位取得退学.現在,愛知教育大学教授.博士(文学).専攻,日本思想史.主著,『近世日本の儒学と兵学』,『近世神道と国学』,『江戸後期の思想空間』(以上,ぺりかん社)『兵学と朱子学・蘭学・国学』『江戸の読書会』(以上,平凡社選書) 他

内容

エリート教育か、藩士全体の教養の底上げか――。
教師による講釈か、自由闊達な議論を認める集団読書(会読)か――。

学問が出世に結びつかない身分制社会の近世日本において、ようやくつくられはじめた学校はさまざまに展開する可能性があった。学ぶ理由が明確でないなかで、学校はいかに生まれ、人々はそれになにを求めたのか。学習の方法、教育の目的に注目することで、官学/私学、儒学/国学/蘭学といった枠組みを超え、17世紀から明治初期までを見通し、江戸教育思想史に新たな地平を拓く。

■担当編集者より■
前田先生には共同論集にご寄稿いただいたことが2度ありました。
なかでも印象深く記憶に残っていたのは、第Ⅲ編第1章所収の「一八世紀日本の新思潮」(『一八世紀日本の文化状況と国際環境』収録)です。
ここでは「草木と同じように朽ちる」ことを拒否する近世の学者たちの熱い思いが吐露されています。身分制社会だった近世は、余計なことは考えず、分に安んじ家業に専念することが求められる時代でした。しかし学ぶことに目覚めてしまった者たちは、そんな生き方には耐えらない。自分の生きた証を学問の世界に残そうと悲壮な思いで研究に没頭しました。彼らにとって真理を追究することなく果ててしまう人生は、草や木の一生と大差ないものだったのです。
近世を生きた人々の息づかいが聞こえてくるような論文だと感銘を受けたことをよく覚えています。

本書は、近世初期から明治の初めまでの教育思想を通史的に扱った意欲作です。その関心は多岐にわたっていますが、「教育」という普遍的なテーマを扱っているからか、とても身近な問題と重なることがたくさんあります。近世の学者たちの意見に共感すること、彼らの主張に学ぶところもきっと多いはずです。

A5判 596頁 9,500円(税別)。
手に取ることを躊躇わせるには十分な威圧感とお値段でしょう。
それでもぜひとも本書を手に取り、繙いてほしい。期待は裏切りません!

ついでながら、巻末所収の年表は主要な出来事と主な学者の生没年を一覧できて便利です。

目次

【目次】

序 章 江戸教育思想史序説
近世と近代の連続・断絶/「教育」と学校/国家有用の英才「教育」/子弟「教育」/二つの教化/学びの学問/講釈と講談/江戸教育思想史の歴史内在的課題

第Ⅰ編 学校構想と家訓

第一章 林家三代の学問・教育論
林家塾の「教方」/博覧強記の学問/講釈と門生講会/五科十等の制/私塾から学校へ/教育と教化の方向性

第二章 江戸前期の学校構想―山鹿素行と熊沢蕃山との対比―
「物知り」批判/「いがた」による庶民教化/庶民教化の学校/武士の教育機関としての学校/「同志」との議論講習/庶民教化と武士教育

第三章 山鹿素行における士道論の展開
士道論の研究史上の問題/『甲陽軍鑑』『武教全書』の軍隊統制法/朱子『小学』と『武教小学』/武士道と職分/封建官僚の士道論

第四章 貝原益軒における学問と家業
学問と家業の並列/家業における勤労精神/学問の「楽」/不朽への意志


第Ⅱ編 儒学の学習法と教育・教化

第一章  太宰春台の学問と会読
徂徠の会読奨励/春台の社会観・人間観/学問の法則/会読の規則/「衆議」と決断/私的空間の学問

第二章 一八世紀の文人社会と学校
彦根藩の文人サロン/会読の三つの原理/藩校建設の是非論争

第三章 細井平洲における教育と政治―「公論」と「他人」に注目して―
「公論」形成の場/「他人の交り」/「相身互」い/「家国の安危」の「相談」/庶民教化と講釈/「他人と他人との附合」の先駆

第四章 寛政正学派の『中庸』注釈
昌平坂学問所の学制改革と会読/四書注釈の基本的立場/注釈の方法/注釈内容の特徴/注釈と会読


第Ⅲ編 国学と蘭学の学習法と教育・教化

第一章 一八世紀日本の新思潮―国学と蘭学の成立―
国学と蘭学の創業意識/「草木と同じく朽」ちない個人/同志との会読/二つの日本意識

第二章 江戸派国学と平田篤胤―村田春海・和泉真国論争をめぐって―
会読の場での論争/語釈の問題/「日本魂」の問題/平田篤胤のスタンス/理性と信仰

第三章 平田篤胤の講釈―『伊吹於呂志』を中心に―
講釈家篤胤/「無学な人」の「学者ぎらひ」/講釈(講談)による庶民教化/「皇国」への帰属意識/一君万民論の成立


第Ⅳ編 私塾と藩校

第一章  広瀬淡窓における学校と社会
淡窓の実力主義/風俗から隔離した学校/奪席会と競争/「官府」の介入事件/隔離された学校での自信

第二章 吉田松陰における読書と政治
横議横行の先駆者/松陰の会読体験/「語」の発見/朋党/読書から政治の場への転換

第三章 長州藩明倫館の藩校教育の展開
創設期と重建期との関連/創設期の風俗教化の目的/創建期の人材教育の目的/風俗教化と人材教育の間/重建期の人材教育への特化/会読における実力と平等
/会読の政治討論の場への転換/藩校と私塾の対立図式の再考

第四章 加賀藩明倫堂の学制改革―会読に着目して―
人格修養の場としての会読/第一期の学制改革/第二期の学制改革/第三期の学制改革/平等化の工夫/試験制度の試行錯誤/学校と人材登用

第五章 明治前期の「学制」と会読
会読と寛容精神/「学制」の教育理念と輪講/郷学の輪講/郷学と学制小学校/輪講の廃止/会読・輪講廃止の理由

終 章

初出一覧
あとがき
江戸教育史年表
索引

紹介媒体

  • 「朝日新聞」

    2016年12月4日

    読書 13面「情報フォルダー」

  • 「週刊読書人」

    2016年12月23日

    紹介

  • 「世界日報」

    2017年5月7日

    紹介 10面読書欄

  • 『日本思想史学』49号

    2017年9月30日

    菅原光

    書評

  • 『日本歴史』834号

    2017年11月

    沖田行司

    書評と紹介

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