日本図書館協会選定図書
2015年7月増刷

著者・編者略歴

たけち・ひでお…1930年、愛媛県松山市生。1950年、旧制松山高等学校理科卒業。1954年、岡山醫科大學卒業。1959年、岡山大学大学院医学研究科(外科系整形外科学)修了、医学博士。1965~66年西独ハイデルベルク大学整形外科留学。元岡山大学助教授(医学部整形外科学)。労働福祉事業団吉備高原医療リハビリテーション・センター名誉院長。日本医史学会会員、森鷗外記念会理事。〈主な著書〉『リハビリテーション医療入門』(医学書院)、『義肢装具とリハビリテーションの思想』(創造出版)、『ビルロートの生涯』(考古堂書店)

内容

大文豪・森鷗外が青年時代にドイツへ留学したことはよく知られている。鷗外は留学中多くの西欧文献に接し、またこの間を通じてドイツ語の語学力が非常に優れたものになった。留学がのちの大文豪になる大きな糧となったのは数多くの研究が明らかにするとおりである。しかしドイツ留学の目的は文学でなく、陸軍医事制度調査と衛生学研修であった。本書は医学史の立場から、軍医としてドイツに渡った青年森鷗外の留学の実態を明らかにする。

目次

第1章  津和野
藩医の家系/鷗外の両親/父静男のオランダ医学修業/静男の人となり

第2章  医学を学ぶ
上京・入学/医学部のカリキュラム/鷗外の外科学教科書への書き込み/卒業試験、卒業

第3章 その時代の衛生学
衛生学と衛生行政/わが国の近代的衛生行政/明治十年ごろまでに出版された衛生学の書物/『國政醫論』と『衛生汎論』/当時の衛生学の概要

第4章 陸軍軍医部に入る
留学のモティベーション/陸軍軍医副/『北游日乗』、『後北游日乗』/齋藤勝壽について

第5章 『醫政全書稿本』十二巻
プラーゲルの『陸軍医事制度書』/『病室著色の事』とプラーゲルの著書/わが国の軍医制度とプラーゲルの著書/パークスの『実用的衛生学マニュアル』とロートの『陸軍衛生学全書』

第6章 留学が決まるまで
留学の原則的要件/明治初期の文部省留学生/鷗外の橋本綱常訪問/留学の決定/留学の目的/留学の受け入れ先

第7章 出発からベルリンまで
『航西日記』/出発から香港まで/香港からヨーロッパまで/初めてのベルリン、『獨逸日記』

第8章 ライプチッヒ
フランツ・ホフマン/衛生学の研修/ヴィルヘルム・ロート/脚気菌発見への鷗外の意見/「日本兵食論大意」/脚気の認識/文学書のことなど

第9章 ライプチッヒ時代の軍事研修
初めてのドレスデン/負傷兵運搬演習/秋期演習参加に至るまで/秋期演習

第10章 ドレスデン
冬期軍医講習会受講の手続き/軍医講習会の内容と受容/ドレスデンでの生活/王宮への参内、ファブリス伯の夜会/プロイセン軍医会/ドイツ文化との接触

第11章 ミュンヘン
論文「ビールの利尿作用」/ミュンヘンでの生活/ルードヴィッヒ二世の謎の死/ナウマンとの論争

第12章 ベルリン
当時のドイツ帝国とベルリン/ベルリンでの論文上梓/国際赤十字会議/ベルリンでの交流/隊務の様子/フリードリッヒ三世の悲劇

第13章 帰国の途へ
アムステルダム、ロンドン/四つの漢詩/パリ/マルセーユからコロンボまで/コロンボから横浜まで

第14章 エリス
エリスがわかるまで/エリスの旅費/ドイツ三部作


初出一覧/あとがき/参考文献/索引(人名・事項)

紹介媒体

  • 『日医ニュース』

    2015年4月5日

    書籍紹介

  • 『日本医史学雑誌』61巻2号

    2015年6月20日

    山崎光夫

    書評

関連書籍

  • このエントリーをはてなブックマークに追加