平成24年度歌舞伎学会奨励賞受賞

著者・編者略歴

さいとう・としひこ…1971年兵庫県生。佛教大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得満期退学、博士(文学)。日本文化史、日本芸能史専攻。佛教大学アジア宗教文化情報研究所、同宗教文化ミュージアムポストドクターを経て、現在、佛教大学宗教文化ミュージアム学芸員。主な著書・共著に『近世堺と歌舞伎』(大阪公立大学共同出版会、2009年)、『日本芸能の環境』(共著、京都造形芸術大学、2004年)、『京の歳時記 今むかし』(共著、平凡社、2006年)など。

内容

 本書は、従来より盛んである元禄期を中心とした近世上方歌舞伎研究から、少し時代を移した元禄期以降の展開、特に上方歌舞伎が特質を大きく転換した化政期から幕末期の実態を究明する。さらに上方歌舞伎の地域的展開や興行史的検討という観点についても考察するが、こうした課題に取り組むうえで重要な興行地として、堺を取り上げる。
 堺における歌舞伎興行の全貌を解明することで、京・大坂の興行、さらには大芝居、中ゥ芝居の役者たちの動向をも照射し、上方歌舞伎の地域的展開の一端を明らかにした。

目次

序章

一 「興行地」堺の成立と定芝居
 1 定芝居官許と「興行地」堺の成立
 2 定芝居の興行機構と規模
 3 定芝居の定員数・観客人口
 4 鎰町芝居から大寺芝居へ
 5 戎嶋芝居の移転と宿院芝居の誕生
 6 宿院芝居から新地芝居へ

二 近世中期鍵町芝居の規模と構造
 1 享保期「鎰町芝居絵図」「戎島芝居絵図」について
 2 享保期鎰町芝居の規模と構造
付節 近世中期戎嶋芝居の内部構造

三 化政期大寺芝居の興行状況
 1 興行状況について
 2 名代と座本
 3 上方役者と大寺芝居

四 天保改革令と堺の歌舞伎興行
 1 天保改革と芸能取り締まりの開始
 2 天保十三年七月触の発布
 3 七月触と堺奉行の見解・対応
 4 堺奉行の上申書に対する幕府の対応
 5 事実上の興行解禁

五 天保改革後の堺と芸能興行
 1 新地南北両芝居の盛況と宮地芝居再開許可口達の発布
 2 文久二年「町目附御用書類綴」をめぐって

六 文久期堺の大寺芝居と説教讃語名代下付交渉
 1 大寺芝居の説教讃語名代下付依頼
 2 堺奉行所との交渉と説教讃語名代

七 二代目中村富十郎と堺
 1 堺と富十郎
 2 天保改革の芸能取り締まりと富十郎
 3 三ヶ国構追放と富十郎来堺時期
 4 その後の富十郎

付論 『堺市史』編纂と二代目中村富十郎ゆかりの品々
 1 『堺市史』編纂と二代目中村富十郎関係調査
 2 『史料採訪目録』と「富十郎遺屋寄託証文」
 3 その他の富十郎関係品

八 興行地堺と観客
 1 堺と贔屓連中
 2 講による観劇
 3 堺の定芝居と観劇料金
 4 堺の木戸札と芝居茶屋
 5 堺奉行所と観客
補論一 近世堺と助成興行
1 助成勧進相撲と堺の人々
2 文政九年勧進能木戸札配当をめぐって

九 近世堺芝居番付考
 1 堺市立中央図書館蔵芝居番付とその現状について
 2 中央図書館蔵芝居番付の来歴
 3 「富十郎番付」と記載情報
 4 財団法人阪急学園池田文庫所蔵の近世堺芝居番付について
 5 『開口神社史料』所収芝居番付の年代について
補論二 堺市立中央図書館所蔵芝居番付(「富十郎番付」)目録

終章


初出一覧
あとがき
図版一覧
索引(人名・書名・地名・事項)

紹介媒体

  • 『藝能史研究』199号

    2012年10月20日

    神楽岡幼子

    書評

  • 『日本歴史』第782号

    2013年7月

    荻田清(梅花女子大学文化表現学部教授)

    書評と紹介

  • 『日本史研究』第611号

    2013年7月

    矢内一磨

    新刊紹介

関連書籍

  • このエントリーをはてなブックマークに追加