ヌノガツクルシャカイカンケイ

布がつくる社会関係

インド絞り染め布とムスリム職人の民族誌

金谷美和 著

  • 体裁
    A5判・口絵6頁・324頁
  • 刊行年月
    2007年04月
  • ISBN
    978-4-7842-1341-2

内容

染色業者カトリーと、カトリーの生産する布について民族誌的記述を行うことで、布を生産することによって構築される社会関係と、布の使用によって構築される社会関係について明らかにする。「手工芸」という表象にとらわれがちな絞り染め布のもつ物質性への注目を喚起することによって、表象論に傾きがちであった物質文化研究の新たな可能性を拓くこと、なかでも布を視点として社会を分析するという文化人類学的研究の新たな可能性を拓くことを目指した意欲作。また、被り布という同じ衣服体系を共有するムスリムとヒンドゥーの衣服を通した関係に着目することによって、従来の宗教イデオロギー的解釈から解放され、衣服のもつジェンダー・コミュニティ・階層などの属性を示す記号的意味など、同じ布の文化を共有する様相を明かす。表象論を超えて――社会関係を築く媒体としての物質文化研究。

目次

序章
  目的と問題の所在
  本書の構成
  調査の方法について

第1章 インド「手工芸」の誕生
  はじめに
  インド「手工芸」の発見
  独立後のインド国家による手工芸開発
  デザイン開発とマーケティング
  カッチの手工芸開発
  「職人」表象
  おわりに

第2章 調査地カッチの概要
  はじめに
  カッチの地理と歴史
  カッチのカースト構成
  おわりに

第Ⅰ部 布がつくる生産者の社会関係

第3章 「染色カースト」としてのカトリー
  はじめに
  植民地期の記録にあらわれるカトリー
  ヒンドゥー・カトリーとムスリム・カトリー
  絞り染めに従事するカトリー
  その他の染色業
  職人・商人としてのカトリー
  おわりに

第4章 絞り染め布の生産形態
  はじめに
  ブジの絞り染め工房
  アブドゥッラー工房
  生産工程
  販売
  工房の一日
  家屋
  おわりに

第5章 生産分業と親族関係
  はじめに
  分業
  親族関係と工房
  アブドゥッラー工房の例
  アブドゥッラー工房の分裂
  女性の役割
  おわりに

第6章 移動と分業のはじまり
  はじめに
  アブラーサーとジャームナガル、ムンバイー
  アブラーサーの職人と仲介者の登場
  アブラーサーからブジへ
  アブドゥッラー工房の親方たち
  カトリーとともに移動した聖者
  おわりに

第7章 「手工芸」への対応
  はじめに
  カトリーの手工芸開発利用
  アブドゥッラー工房の例
  アリモハマドの例
  絞り染め工房とと仕事をするデザイナー
  おわりに

第Ⅱ部 布がつくるジェンダー、カースト、宗教間関係

第8章 頭に被る布の意味と用法
  はじめに
  被り布(オダニー)とは
  被り布と既婚性
  邪視から守る
  カトリーの結婚式における被り布
  被り布とパルダ(女性隔離)の違い
  おわりに

第9章 指標としての布
  はじめに
  文様の構成
  ヒンドゥーの被り布
  ムスリムの被り布
  階層と経済的地位
  おわりに

第10章 布着用の変化と境界
  はじめに
  ムスリムの変化
  ヒンドゥーの変化
  コミュニティの境界
  おわりに

終章

あとがき/註/参考文献/調査先一覧/現地語表記/索引

紹介媒体

  • 月刊 染織α 2007年8月号(317)

    2007年8月1日

    新刊紹介

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