内容

13、4世紀頃に中国で生まれたひとつの壺が、東シナ海を渡って日本に伝わり、16世紀に茶の湯の道具として「千種」の銘を与えられ、名物となった。やがて21世紀にはもうひとつの海、太平洋を渡り、アメリカ合衆国ワシントンDCにあるフリーア美術館(管理運営:国立スミソニアン協会)に収められた――唐物茶壺「千種」の歴史的な変遷を経糸に、「千種」をめぐる多様な文化事象を緯糸に織りなされた、壮大な物語。
日本、アメリカ、中国の研究者による、歴史、美術、考古学、科学などの多角的な分野を網羅した最新の研究成果を収録。

■担当編集者より■
はばひろい興味・関心から読みどころのある本です。

1、国際美術市場でその実力をあらわした茶壺のインパクト!
近代以降、日本では評価を落とし一時行方不明となっていたかつての名物茶壺が、最終的にアメリカにおいて、2009年、リーマン・ショック後の低調な経済状況にもかかわらず約6千万円(66万2500ドル)という高値で落札され、フリーア美術館におさめられた後、東芝国際交流財団の支援によってウェブセミナーも開催され(2011年)、さらに2014年にアメリカで茶壺を中心とした初の茶道具展の開催が実現しました(このとき図録として作られた英語版の本が、本書の下地となっています) →「序」「「千種」と国際美術市場」を参照

2、名物「千種」茶壺を徹底的に実証!
時を経てふたたび姿をあらわした茶壺が、16世紀の茶会記に記載された名物と同じものであるかどうかを、おおくの付属品や文書とあわせて、各専門家がそれぞれ分析・検証をかさねて明らかにしていくスリリングな過程をどうぞ →第2部「「千種」のすがた」・第3部「「千種」、ふたたび海を渡るまで」

3、茶壺の魅力、再発見!
「♪茶壺に追われてとっぴんしゃん・・・」(ずいずいずっころばし)で知られるお茶壺道中で大名の権威のシンボルとされる唐物茶壺の起源をさかのぼれば、中国沿岸部で生まれた素朴な実用の陶器へとたどりつきます。あらためて見直される茶壺の効用や、東アジア研究者による、海底考古学などのダイナミックな陶磁器研究のこれからの可能性にも注目してください →第1部「中国からきた茶壺」

目次

Ⅰ 中国からきた茶壺
唐物が茶道具になったとき  竹内順一
唐物茶壺の展開   李寶平・栗建安(訳:中井淳史)
唐物茶壺  西田宏子
日本における唐物茶壺の考古学  井上喜久男
茶壺の役割―緑茶の味との関係―  大森正司

Ⅱ 「千種」のすがた
「千種」について  ルイズ コート(訳:松村真希子)
一六世紀の茶会記に記された「千種」の拝見記  竹内順一
「千種」をめぐる名  アンドリュー M ワツキー(訳:常田道子)
「千種」の口覆いについて  吉岡明美
「千種」の口覆いと名物裂・富田金襴  佐藤留実
染料――「千種」に附属する染織品から――  毛利千香 ブライス マッカーシー

Ⅲ 「千種」、ふたたび海を渡るまで
「千種」の伝来と唐物茶壺――江戸時代初期を中心に――  岡佳子
野々村仁清作「色絵叭々鳥図茶壺」をめぐって  岡佳子
一七世紀以降の「千種」の伝来  熊倉功夫
皓々斎宗也筆「茶壺紐飾雛形書」について  岡佳子
「千種」と国際美術市場  ジュリア ミーチ(訳:前﨑信也 清水彩野)

「千種」関係史料集
  茶会記・名物記等/「千種」附属文書/久田家文書

 「千種」の主要附属品一覧/編者・著者紹介/謝辞

紹介媒体

  • 「茶華道ニュース」第808号

    2017年2月1日

    紹介

  • 『古書通信』82巻2号

    2017年1月15日

    受贈書目

  • 『炎芸術』No. 130

    2017年5月1日

    新刊紹介

  • 『芸能史研究』217号

    2017年4月

    紹介

関連書籍

  • このエントリーをはてなブックマークに追加