多摩美術大学教授、フィラデルフィア美術館学芸員。大阪大学大学院文学研究科美術史学日本美術史専攻。博士(文学)。業績に、Felice Fischer, Kyoko Kinoshita. Ink and Gold: Art of the Kano. Philadelphia Museum of Art, 2015; “Tradition and Transformation of Genji-e by the Edo-Kano School Artists,” The Tale of Genji: A Japanese Classic Illuminated. Metropolitan Museum of Art, 2019ほか。
スギトエノケンキュウ
杉戸絵の研究
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体裁A4判・418頁
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刊行年月2026年04月
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ISBN978-4-7842-2131-8
著者・編者略歴
内容
近世の城郭御殿や神社仏閣において、杉戸は権力空間や宗教空間を荘厳する不可欠な建具であった。杉戸の一部は「廃城令」以後に海外へと流出し、現在ではその一部がアメリカの美術館の収蔵庫に眠っているが、それらの引手に刻まれた葵紋は、徳川の時代の記憶を今もなお静かに伝えている。一方、日本に現存する杉戸は、その扱いや保存・評価の難しさから、杉戸絵が障壁画研究において副次的に取り上げられることはあっても、研究主体として扱われることはほとんどなかった。
本書は、城郭御殿を代表する名古屋城と二条城の杉戸をはじめ、徳川家ゆかりの寺院や霊廟に伝来する杉戸、明治宮殿の杉戸、さらには在米美術館所蔵の杉戸絵にまで視野を広げ、国内外に分散する杉戸の実態を総合的に分析する。豊富なカラー図版と研究者7名による論考およびコラムを通じて、これまで周縁化されてきた杉戸絵研究の基礎を確立することを目指すものである。
★★★編集からのひとこと★★★
重たい。大きい。状態が悪い。取り扱いも容易ではない……。
杉戸絵を研究するには、常にこうした困難が伴います。この難題にチャレンジするプロジェクトがスタートしたのは、なんとアメリカの美術館の収蔵庫でした。
本書は、これまで杉戸を大切に保存してこられた国内外の現場関係者の方々、ならびに修復・撮影担当の方々のご協力によって実現した【図版篇】と、執筆陣が渾身の原稿を寄せた【論文篇】から成る二部構成です。
杉戸絵の多くは、顔料の剥落や変色が進み、必ずしも華やかな美しさを備えているわけではありません。しかし、絵画でもあり建具でもあるという特異な形態は、圧倒的な存在感を放っています(『鴨東通信』122号巻頭対談参照)。杉戸絵を本格的に美術史研究の俎上に載せる第一歩として、本書が多くの方に手にとっていただけることを願っています。
目次
はじめに
【図版篇】
鶴林寺本堂の杉戸絵
西教寺客殿の杉戸絵
名古屋城本丸御殿の杉戸絵
伝名古屋城二之丸御殿の杉戸絵
相応寺の杉戸絵
建中寺の杉戸絵
名古屋城竹長押茶屋の杉戸絵
伝西浜御殿の杉戸絵
名古屋離宮の杉戸
二条城二之丸御殿の杉戸絵
養源院本堂の杉戸絵
喜多院客殿の杉戸絵
日光東照宮の杉戸絵
〔参考〕「日光山御宮之図」部分
輪王寺大猷院の羽目板絵
紀州御殿の杉戸絵
和歌山城の杉戸絵
イザベラ・ガードナー美術館蔵の杉戸絵
ボストン美術館蔵の杉戸絵
フィラデルフィア美術館蔵の杉戸絵
〔参考〕東京国立博物館蔵「江戸城障壁画下絵」
【論文篇】
木下京子「序論 杉戸と杉戸絵の成立とその展開」
[コラム]久保智康「近世の飾金具」
朝日美砂子「名古屋城下の杉戸絵」
[コラム]朝日美砂子「名古屋城の杉戸絵―指定と保存・修理と現場―」
[コラム]朝日美砂子「旧国宝 名古屋離宮の杉戸―引手を手掛りに―」
松本直子「二条城二之丸御殿杉戸絵について―徳川幕府の城郭御殿杉戸絵との比較から―」
[コラム]松本直子「二条城二之丸御殿杉戸絵の修理と模写について」
[コラム]松本直子「二条城本丸御殿(旧桂宮御殿)の杉戸絵」
奥平俊六「宗達と板絵の画家―養源院の杉戸絵はどのように描かれたのか―」
[コラム]奥平俊六「喜多院障壁画と土佐一得」
山澤学「江戸狩野派杉戸絵と徳川将軍家霊廟拝殿の荘厳」
五十嵐公一「明治宮殿杉戸絵―『皇居御造営誌』『皇居造営録』から分かること―」
木下京子「アメリカに流出した城郭御殿と寺院の杉戸」
[コラム]ペギー・オリー、ケイト・ダフィー、木下京子「フィラデルフィア美術館所蔵杉戸の杉板について」
謝辞/あとがき/執筆者略歴/収録杉戸絵一覧/英文目次/要旨