兵庫県生まれ。2007年 大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在 京都産業大学文化学部准教授。博士(文学)(大阪大学)。論著に、「唐朝政治史上の『仁王経』翻訳と法会――内廷勢力専権の過程と仏教」(『史学雑誌』115-3、2006年)、「不空の長安仏教界台頭とソグド人」(『東洋学報』89-3、2007年)ほか。
関連書籍
モウヒトツノトウチョウ
もうひとつの唐朝
仏教と中心化する「周縁」
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体裁A5判・596頁
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刊行年月2026年03月
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ISBN978-4-7842-2124-0
著者・編者略歴
内容
近年、唐代史の叙述は、中央ユーラシア史やジェンダーの視点を採り入れ、大きく変わりつつある。しかし政治史においては、皇帝と貴族・儒家官僚ら男性エリートを中心に据えた「正統史観」が依然として強固である。本書は、従来「周縁」に位置づけられてきた女性・宦官・外来人・仏教僧侶を中心に据え、唐代史の枠組みをパラダイム転換する試みである。仏教を媒介として結びついたこの「もうひとつの唐朝」は、禁軍や寺院のような組織を通じ、宗教・軍事・経済面で無視できない勢力を形成した。そして、唐代のじつに三分の一の期間にわたり、独自のやり方で国家を支え、動かしていたのである。
目次
序章
一 問題の所在
二 三つの視角から描く「もうひとつの唐朝」
三 地域設定について
四 本書の構成
五 使用史料について
第Ⅰ部 「周縁」勢力の台頭とそれに対する反動
第1章 武韋政権における仏典翻訳の政治性
はじめに
第一節 即位の障壁と仏教経典――『大雲経疏』と『宝雨経』
第二節 武則天期の訳経事業
第三節 武則天退位後の訳経者とその特徴
おわりに
第2章 武韋政権と仏教的世界観の転換――辺土から中心へ
はじめに
第一節『仏頂尊勝陀羅尼経』序文にみえる霊験譚と五臺山
第二節 『仏頂尊勝陀羅尼経』序文作成後の五臺山文殊
おわりに
第3章 ソグド人と仏教――唐における「改宗」の諸相
はじめに
第一節 唐内地におけるソグド人僧侶
第二節 在家ソグド人と仏教
第三節 ソグド人に広まる仏教――とくに地獄思想との関連から
第四節 内廷の政治勢力と結びつくソグド人僧侶
おわりに
第4章 天竺から来たソグド人――「故金剛智三蔵行記」より
はじめに
第一節 「故金剛智三蔵行記」の内容
第二節 香木の海上輸送とソグド人・ペルシア人
おわりに
第5章 玄宗開元期の反動――仏教粛正と「胡」への対応
はじめに
第一節 武則天・太平公主と寺院・僧侶および「胡」との関係
第二節 開元期の「胡」への対応
第三節 「外国蕃僧」に対する帰国命令
おわりに
第Ⅱ部 「周縁」勢力の再興とその後
第6章 宦官による政治主導と仏教の役割――『仁王経』翻訳事業の分析より
はじめに
第一節 内廷勢力と不空の結合過程
第二節 『仁王経』翻訳と法会の意義再考
おわりに
第7章 不空の長安仏教界における台頭とソグド人
はじめに
第一節 不空とソグド系武人
第二節 宦官の軍事力強化とソグド人
第三節 不空僧侶集団下のソグド姓僧侶と宦官・禁軍勢力
おわりに
第8章 徳宗期の長安仏教界とユーラシア情勢――『大乗理趣六波羅蜜多経』翻訳事業の分析より
はじめに
第一節 『大乗理趣六波羅蜜多経』翻訳と宦官・禁軍勢力
第二節 安史の乱~徳宗期の宦官・禁軍勢力の人的構成
第三節 『大乗理趣六波羅蜜多経』翻訳にみる長安宗教界
おわりに
第9章 徳宗期『四十華厳』翻訳にみる仏教的中華
はじめに
第一節 『四十華厳』翻訳から『貞元録』への入録・流布までの概観
第二節 『貞元録』中の「四十華厳の条」の分析
第三節 『四十華厳』にみえる国王と中華皇帝
第四節 『四十華厳』翻訳と『貞元録』編纂の背景
おわりに
第10章 宦官にとっての仏教――儒教的価値観の超克
はじめに
第一節 宦官の身体回復と仏教
第二節 宦官の政治拠点としての寺院――章敬寺
第三節 長安城内の寺院と人的ネットワーク
おわりに
第11章 「もうひとつの唐朝」と会昌の廃仏
はじめに
第一節 仏教側の戦略――国家利用と隠匿
第二節 在唐外来人と仏教
第三節 宦官の勢力伸長と禁軍・寺院
第四節 廃仏前夜における宦官の勢力削減
おわりに??唐朝の廃仏の目的は何か
参考:会昌の廃仏の経過
第12章 「もうひとつの唐朝」の遺産――沙陀の唐中興と五臺山
はじめに
第一節 後唐建国前の沙陀と五臺山僧侶
第二節 沙陀による五臺山掌握の意義
おわりに
終 章
一 唐代政治史のパラダイム転換
二 ユーラシア東部と移動する人々――「もうひとつの唐朝」の勢力基盤
三 ユーラシア東部と唐仏教
四 唐仏教のその後
初出一覧
あとがき
参考文献[日文/中文/欧文]
索引