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「幻の源氏物語絵巻」をもとめて

十七世紀、絵巻の時代と古典復興

佐野みどり 編

小嶋菜温子 編

高橋亨 編

  • 体裁
    A4判横綴じ函入・504頁
  • 刊行年月
    2025年06月
  • ISBN
    978-4-7842-2110-3

内容

「源氏絵」の歴史のなかでも際立つ個性を有している「幻の源氏物語絵巻」。黄金をふんだんに使用した豪華な造りに加え、他の源氏絵のパターンとは一風変わった場面選択が見られる点でも注目される。現在までに存在が確認されているのは20巻弱、完本で揃っていたとすれば、全体で200巻を超すものであった可能性がある。誰がどのような意図のもとで、このような絵巻を制作しようとしたのか。詞書染筆者の問題も含めて、江戸時代初期の文化史・政治史・経済史的な状況を見渡しての検証が必須となろう。日本文化史のミッシングリンクというべきこの豪華絵巻の謎に、豊富なカラー図版と国文学研究者・日本美術研究者15名の論文でもって迫る。

目次

【図版編】
桐壺 上中下三巻(個人蔵)
帚木 一巻(部分、ニューヨーク・パブリックライブラリー スペンサー・コレクション蔵)
空蝉 残欠巻(石山寺蔵)
夕顔 断簡(個人蔵)
末摘花 上巻(石山寺蔵)
末摘花 中・下巻(部分、ニューヨーク・パブリックライブラリー スペンサー・コレクション蔵)
葵 六巻(京都国立博物館蔵)
葵 断簡「葬礼図」(メトロポリタン美術館蔵)
賢木 詞書(部分、個人蔵)
賢木 断簡(個人蔵/メトロポリタン美術館蔵)
    
【論文編】
[総論]「幻の源氏物語絵巻」と〈もののまぎれ〉―「注釈的絵画」にみる再創造と文学/美術史学の可能性(小嶋菜温子)

第一部 「幻の源氏物語絵巻」の復元にむけて

盛安本源氏物語絵巻(幻の源氏物語絵巻)再考(佐野みどり)
   *
物語絵画としての盛安本源氏物語絵巻―源氏物語の年立を通した一考察(エステル・ボエール)
「源氏物語絵巻」桐壺―幻の「源氏物語絵巻」巻頭帖としての意義(吉川美穂)
京都国立博物館蔵「幻の源氏物語絵巻」葵から―メトロポリタン美術館蔵「葬礼図」の定位とあわせて(松岡知華) 
バーク本「源氏物語絵巻」賢木巻断簡から(稲本万里子) 
[コラム]「幻の源氏物語絵巻」の詞書と絵画化―物語全文を書き写すことの意味(青木慎一)
スペンサー・コレクション蔵 「幻の源氏物語絵巻」三巻(渡辺雅子)
[特別寄稿]石山寺蔵 空蝉残欠巻の紹介 (田中水萌)

第二部 十七世紀、絵巻の時代と古典復興

九条家の源氏学と絵画(高橋亨)
   *
「幻の源氏物語絵巻」の製作背景追考―九条家・賀茂社家の人々とその環境をめぐって(海野圭介)
鹽竈神社蔵『絵詞 保元・平治』をひもとく―杉原盛安・杉原本と「保元・平治物語絵巻」(鈴木彰) 
「幻の源氏物語絵巻」の「空蝉」―中世・近世の『源氏物語』享受とその展開(水谷隆之)
室町時代やまと絵と源氏絵の再生―大画面の出現と土佐光信・光茂・光元による新展開(高岸輝)
[コラム]近世絵巻の研究に向けて(若杉準治)
   *
[結び]本書の成果と今後の課題(高橋亨)

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