リュウキュウコクオウノショウゾウガオゴエトソノテンカイ

琉球国王の肖像画「御後絵」とその展開

平川信幸 著

  • 体裁
    B5判・256頁+口絵28頁
  • 刊行年月
    2024年03月
  • ISBN
    978-4-7842-2076-2

著者・編者略歴

沖縄県沖縄市出身、1976年生れ。別府大学文学研究科博士課程前期文化財学専攻修了。沖縄県立芸術大学博士課程後期修了、博士(芸術学)。専門は琉球・沖縄絵画史。特に図像分析を研究テーマとしている。2005年より沖縄県立博物館に勤務。立ち上げスタッフとして美術品、歴史資料の調査に関わる。2008年に琉球から中国皇帝へ献上された北京故宮博物院の漆器の里帰り展「甦る琉球王国の輝き」を担当。2011年から2022年まで県教育庁文化財課文化財課主任専門員。2023年から沖縄県立博物館・美術館主任学芸員。共著に『すぐわかる沖縄の美術』(東京美術、2007年)、『琉球船と首里・那覇を描いた絵画史料研究』(思文閣出版、2019年)、『古地図で楽しむ首里・那覇』(風媒社、2022年)等がある。

内容

琉球絵画は、その歴史と同じように独自の輝きを放っていたが沖縄戦によって多くの作品が失われた。今日、残されている琉球絵画の作品は、日本や中国、韓国など東アジア諸国との交流の中で展開した作品群の一角でしかない。その研究は、辛うじて残った断片を手掛かりに、作品の存在を証明していくことから始めなければならないのである。
本書は、琉球絵画の中でも、国王の肖像画「御後絵」や『片目地頭代(喜久村絜聡)画像』など数々の名作が描かれた肖像画に焦点をあて、現存する作品だけでなく戦前に撮影されたガラス乾板や豊富な文献資料によって、その描写的特徴や様式の変遷などの考察を行った、琉球絵画史上初の体系的叙述である。

目次

序 章
第1節 研究動向
第2節 本論文の課題
第3節 論文の構成

第1章 御後絵の歴史と戦前の保管をめぐる経緯について
第1節 第二尚氏時代の御後絵とその制作について
第2節 鎌倉芳太郎の調査
第3節 真境名安興・比嘉朝健の調査
第4節 真栄平房敬による証言
小 結
図 版

第2章 北東アジアにおける御後絵の図像的特徴
第1節 御後絵に描かれた多様な図像の考察
第2節 日本の天皇の肖像画
第3節 朝鮮王朝の国王の肖像画(御真)
第4節 中国の皇帝の肖像画コレクション(南薫殿図像)
小 結
図 版

第3章 御後絵の国王衣裳の考察
第1節 明代の国王御後絵の衣裳
第2節 清代御後絵の国王衣裳
第3節 御後絵の国王衣裳が意味するもの
小 結
図 版

第4章 御後絵の家臣団について
第1節 御後絵の家臣団の図様の特徴
第2節 国王の儀仗について
第3節 尚純公御後絵の家臣団との比較
小 結
図版

第5章 御後絵に描かれた家具および道具類について
第1節 御後絵の家具および道具類の図像
第2節 衝立について
第3節 玉座との比較-香炉の出現と儀礼の変化について-
小 結
図 版

第6章 『程順則画像』について
第1節 程順則画像』とは
第2節 先行研究と本研究の問題設定
第3節 中国の祖先像の起源と明末清初の状況
第4節 家譜による家臣団の把握と祖先祭祀による琉球の肖像画への影響
第5節 近世琉球期の中国絵画の導入と殷元良の経歴
第6節 『程順則画像』の描写の考察
小 結
図 版


第7章 『喜久村絜聡(片目地頭代)画像』について
第1節 像主の経歴
第2節 画賛の成立と家譜の編纂について
第3節 画像に見る像主の表現
第4節 琉球の衣冠制度と絵画表現
小 結
図 版


第8章 首里士族の肖像画の成立と展開
第1節 御後絵様式の肖像画の広がり
第2節 首里士族像画の様式の確立
第3節 メッセージを発する肖像画
小 結
図 版

終 章
第1節 御後絵の図像における国王イメージの表出と変化
第2節 士族層における儒教的な祖先祭祀の受容と肖像画の成立
第3節 琉球の想像画の展開とその要因

参考文献
索 引

  • このエントリーをはてなブックマークに追加