著者・編者略歴

1952年大阪府生まれ。博士(美学)。1981年、関西学院大学大学院文学研究科博士課程美学専攻修了。京都市美術館学芸課勤務を経て、京都女子大学 家政学部に転職。2018年、京都女子大学定年退職。現在、同名誉教授。

内容

「何が京都画壇に近代化をもたらしたか」という問いに対して、従来の研究では、竹内栖鳳の渡欧(1900年のパリ万博視察)が重大な契機であったと語られてきた。本書は、髙島屋史料館が保管する輸出向け染織品の下絵など関連資料を駆使して、栖鳳が渡欧以前に髙島屋画室において行った活動を復元し、画室における下絵制作の実践こそが栖鳳の画風を進化させ、京都画壇の近代化を導いたということを明らかにするものである。

★★★編集からのひとこと★★★
「巨匠」「天才」という言葉で形容されがちな竹内栖鳳ですが、本書がスポットを当てるのは「巨匠」になる前、葛藤しながら模索する、若き日の栖鳳です。
日本画家たちのなかには下絵制作に参じることを恥じる風潮もあった中で、髙島屋の小さな画室で「新しい日本画」を追い求めて実験を繰り返しました。日本画の大切なものを守りながらも西洋からもたらされた要素を貪欲に取り入れる栖鳳の柔軟性は、自らの画業を成熟させるだけでなく、個性豊かな弟子たちの活躍へとつながり、近代京都画壇を進展させました。
学芸員・大学教員として40年間栖鳳を追いかけてきた著者が地道に資料を博捜しながら組み立てた、全く新しい栖鳳像。髙島屋創業家・飯田新七と栖鳳の友情物語として読んでも興味深いです。

目次

序に代えて
第一章 幕末~明治初年の京都の様相
第二章 フェノロサ刺激
第三章 ふたりの新七
第四章 芸術と産業の接点
第五章 一九〇〇年パリ万国博覧会
第六章 栖鳳の渡欧
第七章 明治四〇年以降の栖鳳と髙島屋
終わりに

謝辞/著者あとがき/初出論文一覧/参考図書一覧

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