著者・編者略歴

東京大学総合研究博物館インターメディアテク顧問。近著『前衛誌―未来派・ダダ・構成主義(日本編)』(2018年、東京大学出版会)、『雲の伯爵』(2020年、平凡社)、『書姿考』(2020年、玄風舎)、『ことばとかたち―キリスト教図像学へのいざない』(2023年、東京大学出版会)ほか。2015年仏国レジョン・ドヌール勲章シュヴァリエ受章。

内容

幕末から明治にかけて、日本は社会の様々な分野で西欧化の実現に努めてきた。その過程において、実働部隊として活躍した人々は、多くがいまだ曖昧模糊のままある「洋学」の体現者であった。
異なる分野の境界に身を晒す、というのではない。外国語の習得に始まり、医学、薬学、動物学、植物学、農学など、数多の領野を自らの裡に丸ごと抱き込む、そうした秀才、奇才を多く輩出した時代の学問の実態、わけても書物の記述・生産法、標本の作成・保存法から窺うことのできるそれは、現代を生きるわれわれの眼に、新鮮かつ、刺激的に映る。

史料・標本のカラー図版を多数収録。博物館工学者の視点から、学術標本(モノ)を出発点とする研究方法の可能性を、あらたに提起する。

★★★編集からのひとこと★★★
西洋諸国と肩を並べるため、近代日本の奇才たちがこぞって学んだ「洋学」とは一体何だったのか。その曖昧模糊とした学問の実相を、東大博物館元館長の著者が、解剖学・辞典学・博物学の3 方から論じます。
本書は背幅が約4㎝と分厚めなのですが、見た目の重厚感とは裏腹に、手に取ると想定外に軽い! その理由は、海外のペーパーバックのような趣のある本文紙です。また、色味の違う2種類の紙を使用することで作りだしたストライプ模様の小口にも是非注目してください。拘りの造本も魅力的な、書斎の本棚に入れて眺めて欲しい1冊です。

目次

はじめに

第一章 西洋解剖学誌
ガレノス復興/薬物誌(マテリア・メディカ)/ウェサリウス解剖学/解剖学ルネサンス/アカデミー解剖学

第二章 倭解剖学誌
古方腑分図/剪型式解剖図/紅毛流解剖図/クルムス解剖学表/洋方解剖学/骨学/銅版解剖図/官許解剖学/人体模型/独逸解剖学

第三章 芸用解剖学誌
外部解剖学/技術解剖学/美術解剖学/裸体画論争/芸用解剖学

第四章 洋学辞典誌
蘭語辞典/蘭語文典/英語辞典/英語文典/魯語辞典/独語辞典/仏語辞典/近代活版

第五章 倭本草学誌
倭本草/自然の体系(システマ・ナチュラエ)/蘭書の移植/菩多尼訶(ボタニカ)/二十四綱解

第六章 学術標本誌
救荒野帖/昆蟲標本/本草図譜/園芸/農学/森林植物/写生画/掛図

第七章 日仏学術交流誌
三宅・田中・サヴァティエ/近代医家/学術官僚/仏人軍医/おわりに

補遺 日本近代植物学黎明期における日仏協働の実相―サヴァティエの遺産から(クリスティアン・ポラック氏との共著)
日本と博物学者サヴァティエ/横須賀の順化園/植物標本の収集/田中芳男・伊藤圭介・小野職愨との交流/出版事業/新出史料

紹介媒体

  • 『洋学史通信』第39号

    2024年2月

    青木歳幸

    新刊紹介

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