内容

本書は、近年の藩研究では後景に退きがちな近世武士論の必要性を強く認識し、藩研究の活況に触発されつつも、あらためて武家領主支配という観点から、大名とその家臣や、彼らによる〝家〟の伝記を取り上げ、著者が提唱する「藩領社会」における武士の意識をあぶり出す。

★★★編集からのひとこと★★★
現在、公務員が担っているような行政的役割を、かつて武士が担っていた時代がある。
自治体史の編集などの仕事を重ねられてきた著者ならではの視点で、近代とも密接に結びつく武士アイデンティティー形成のありようをひもとく、格好の本です。

目次


  研究認識と課題
  本書の概要

第一部 大名と藩領社会
第一章 大名と藩政
    大名と藩政
    政治の基層
第二章 藩領社会の人々とくらし
    藩領社会の記録化
    役人と地域社会
    くらしのあり方

第二部 知行・役勤・立身
第三章 近世の武士と知行大名
    知行と家臣知行
    〝家〟と知行
    拝領の意味
    近世の知行観
    知行権制約と治政
第四章 近世大名家臣の役勤と人事
    武功認識の変容
    役勤と人事
    〝家〟と昇進
第五章 「名利」と「立身」
     山本常朝と『葉隠』
    「奉公人」像
    「立身」の条件
    「奉公人」の「立身」

第三部 武士の自他像
第六章 『葉隠』思想の形成
    佐賀藩の過去と現実
    常朝の自己と一門
    思想の基調
第七章 貝原益軒の「武」認識とその行方 
    泰平のなかの「武」
    貝原益軒と家臣伝
    武功譜代者の差異化
第八章 政治社会と武士祭祀
    ヒトガミ(人神)とは
    地域での祭祀
    神格化の環境と条件
    ポスト武士の時代


  いくつかの論点
  展望

初出一覧/索引

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