内容

これまで江戸思想史の研究者たちは、「パックス・トクガワーナ(徳川の平和)」と称される二百六十年余の間に営まれた、豊饒な江戸思想史の世界を掘り起こしてきた。ただ一方で、個々の面白い事実は相当数、積み上がってきたのだが、それらの事実を組み込んで、新たな江戸思想史として構成するチャレンジは行われていない。(中略)しかし、現代に生きる一人の思想史研究者として、個性豊かな思想家の思想や広く流通している観念を自らの構想力によって構成して、新たな江戸思想史の全体像を提示することが必要であると考えている。この「江戸思想史の再構築」という、少し大仰な書名には、こうした野心が込められている。(本書「あとがき」より)

★★★編集からのひとこと★★★
本書は、長年思想史研究をリードしてきた著者による、オムニバスの論文集です。書名には「江戸」と冠するものの、近現代へとつらなる思想史についての論考も多く含まれ、時代をこえてダイナミックに思想史をフォローしている点が、本書の魅力の一つだと思います。
また、第Ⅳ編では、江戸思想史がどう論じられてきたのかという、現代思想史学史の論考も豊富。
これから思想史学を学ばれる方に、ぜひ手に取っていただきたい、必読の書です。

目次

第Ⅰ編 諸学問・宗教の交錯
第一章 儒学・国学・洋学
第二章 近世儒学論
第三章 仏教と江戸の諸思想
第四章 林羅山の仏教批判―『儒仏問答』を中心に―
第五章 近世神道から国学へ
第六章 近世日本における「天壌無窮の神勅」観

第Ⅱ編 兵学・武士道と武国
第一章 兵学と武士道
第二章 近世国家の「仕置」政治論―山鹿素行を起点にして―
第三章 五人組帳の思想史的考察
第四章 山鹿素行『中朝事実』における華夷観念
第五章 近世日本の「武国」観念
第六章 幕末海防論における華夷観念

第Ⅲ編 公論と訓読体
第一章 政治概念「公論」
第二章 諫言の近世日本思想史
第三章 漢文訓読体と敬語
第四章 明治前期の訓読体―言路洞開から公議輿論へ―

第Ⅳ編 日本思想史学の方法
第一章 学問としての日本思想史
第二章 村岡典嗣を読む視点
第三章 石田一良『文化史学 理論と方法』から何を学ぶか
第四章 丸山眞男の江戸思想史像
第五章 安丸良夫の通俗道徳論と天皇制論
第六章 日本近世儒学研究史

終 章

紹介媒体

  • 『洋学史通信』

    2023年4月30日

    青木歳幸

    新刊紹介

  • 『日本歴史』第911号

    2024年4月

    綱川歩美

    書評

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