トウテイコクノメツボウトトウブユーラシア

唐帝国の滅亡と東部ユーラシア

藩鎮体制の通史的研究

新見まどか 著

  • 体裁
    A5判・324頁
  • 刊行年月
    2022年12月
  • ISBN
    978-4-7842-2047-2

著者・編者略歴

1987年、広島県生まれ。2015年、大阪大学大学院文学研究科修了、博士(文学)。日本学術振興会特別研究員(RPD)、同志社大学嘱託講師、大阪人間科学大学・大阪大谷大学・岡山大学非常勤講師、大阪大学大学院人文学研究科助教を経て、現在、甲南大学文学部歴史文化学科専任講師。専門は唐・五代史。論文「皇帝並立時代の幕開け―『錦里耆旧伝』所収、後梁・前蜀間国書考」(『唐代史研究』25, 2022年)等。

内容

栄華を誇った唐帝国は、突如勃発した安史の乱により存亡の淵に立たされた。しかし唐はこの危機を乗り越えて復活し、その後約150年にわたり命脈を保った。では、唐はなぜ安史の乱で滅びなかったのか。そして、なぜ乱の150年後に滅びたのか。
近年の国内外における関連諸研究の進展をふまえ、長らく停滞していた藩鎮研究に新たな光を当てることで、「その後」の唐を支えた藩鎮体制を再評価。さらに、9世紀に生じた対外的な軍事バランスの変化に注目し、唐帝国滅亡の原因に迫る。

★★★編集からのひとこと★★★
唐後半期の藩鎮の研究――。なんて地味なことを研究しているんだろう、というのが第一印象でした。そもそも安史の乱以降の唐代史に人気がないし、藩鎮の研究は日野開三郎や堀敏一といった大家がやり尽くしていると思っていました。しかし本書はそうした先入観をあっさりと裏切る快著です。中央ユーラシア史の視点から藩鎮研究を刷新するだけでなく、唐帝国の滅亡の原因にも独自の切り口から迫ります。なかでも、対外的脅威の消滅に伴う軍縮が、かえって帝国の滅亡につながる社会不安を招いたことを論じる第二部は白眉。東洋史の専門家のみならず、多くの方にお勧めします。

目次

序 章 唐代藩鎮研究の現状と課題
第一節 唐後半期の歴史展開と藩鎮体制
第二節 唐代藩鎮研究史
第三節 本書の課題と構成

第一部 唐代藩鎮体制の形成

第一章 代宗期における藩鎮婚姻集団の形成とその背景
はじめに
第一節 華北東部の藩鎮における婚姻関係
第二節 華北東部藩鎮の婚姻集団と李宝臣
第三節 李宝臣の権力基盤
おわりに

第二章 徳宗期における河北藩鎮をめぐる婚姻関係─ウイグルの王女と唐の公主
はじめに
第一節 盧龍節度使とウイグルの婚姻
第二節 徳宗期における河北藩鎮への公主降嫁
第三節 公主降嫁形態の分析
おわりに

第三章 平盧節度使の軍事・経済活動と海商・山地狩猟民
はじめに
第一節 徳宗・憲宗期の河北・河南情勢
第二節 経済・軍事面より見た平盧節度使
第三節 平盧節度使による山棚と海商の掌握
おわりに

第二部 唐代藩鎮体制の変容 

第四章 武宗期における藩鎮体制の変容─劉稹の乱を中心に
はじめに
第一節 唐代藩鎮史における劉稹の乱
第二節 劉稹の乱勃発と南走ウイグル
第三節 河朔三鎮対策の転換
第四節 乱後の軍縮と唐代藩鎮体制の動揺
おわりに

第五章 僖宗期における藩鎮体制の崩壊─黄巣の乱と李克用の乱
はじめに
第一節 黄巣の乱の沿革と朝廷の動員兵力
第二節 黄巣の乱前半期における用兵上の諸問題
第三節 僖宗期の軍事政策より見た唐代藩鎮体制の崩壊
おわりに

第三部 唐代藩鎮体制の終焉 

第六章 後梁の藩鎮体制と河北経略
はじめに
第一節 後梁建国直後の藩鎮体制
第二節 後梁優位の転換と河北
第三節 末帝期における節度使の離反と河北の喪失
おわりに

第七章 燕の興亡と沙陀・契丹の擡頭
はじめに
第一節 僖宗期以後の盧龍節度使と沙陀勢力
第二節 十世紀初頭における東北方情勢の中の盧龍節度使
おわりに

第八章 成徳王氏政権の終焉と沙陀の後唐建国
はじめに
第一節 「王鎔墓誌」の形態と内容
第二節 李存勗と王鎔
第三節 李存勗政権正当化における王鎔の位置
おわりに

終 章 唐帝国の滅亡と東部ユーラシア

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