コンジャクモノガタリシュウノセイリツトタイガイカン

『今昔物語集』の成立と対外観

荒木浩 著

  • 体裁
    A5判上製函入・460頁
  • 刊行年月
    2021年12月
  • ISBN
    978-4-7842-2015-1

内容

平安末期に成立した説話集『今昔物語集』と、その根幹的な原拠という11世紀の源隆国「宇治大納言物語」。
10世紀後半の奝然の渡宋・帰国と一切経の請来のインパクトを承けて進展した対外交流や書物の輸出入、仏教的世界観の中での和国意識の高まりという対外観に注目しつつ、古代説話集の成立から『今昔物語集』の生成へという文学史、仏教文化史の潮流を論じる。

仏教世界の起源である仏伝の中に、日本だけにしか存在しない仏の遺言を語り伝え、和語で描こうとすること、また阿倍仲麻呂帰国説の生成など―、あまたの画期的な物語行為はいかにしてなされたのか。

★★★担当編集からのひとこと★★★
古代説話集から『今昔物語集』まで、その成立の背景を、対外交流・対外観に注目して論じる壮大な構成です。
その中でやはり気になるのは、『今昔物語集』の直接の前提となったとされる「宇治大納言物語」の作者、源隆国の存在です。和語・仮名文で説話を記すという、当時としては異例の作品はなぜ生まれたのか。甥の入宋僧・成尋に漢語で記した自著を託し、当地での評判を気にしていたほど中国を意識していた彼の手でそれが生まれたことに、興味を惹かれます。

さて、本書は「思文閣人文叢書」の第1冊目です。これからも知的好奇心を刺激する書籍をお届けしていく所存です。

目次

はじめに―対象としての説話集史素描
序 論 仏教文学としての説話集と対外観

第一部 古代説話集の成立と対外観
第一章 仏教類書の影響と説話集の存立―「諸教要集」をめぐって
第二章 『三宝絵』の捨身と孝―尊子内親王をめぐる
第三章 投企される〈和国〉性

第二部 源隆国と「宇治大納言物語」―説話集と作者の環境
第一章 源隆国の才と説話集作者の資質―研究史再考から「宇治大納言物語」へ
第二章 源隆国晩年の対外観と仏教―宇治一切経蔵というトポスをめぐって
補 論 藤原忠実の「家」と「父」そして「子」―言談・説話の中の院政期

第三部 『今昔物語集』の成立と宋代
第一章 『今昔物語集』成立論の環境―仏陀耶舎と慧遠の邂逅をめぐって
第二章 『今昔物語集』の成立と宋代―成尋移入書籍と『大宋僧史略』などをめぐって
第三章 かへりきにける阿部仲麻呂
第四章 『今昔物語集』の宋代観と和歌逸話の形成

補 論 編纂動機と逸話配列―紀貫之の亡児哀傷と『国文学史講話』をめぐって
終章 世界叙述と説話文学史―矜恃する和語

紹介媒体

  • 「週刊 読書人」2022年3月18日付

    2022年3月18日

    片岡耕平

    書評

  • 『日本文学』第71巻第11号

    2022年11月10日

    森正人

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  • 『説話文学研究』第58号

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