日本現代美術とマルセル・デュシャン
定価
8,800 円(税込)
本体 8,000円
在庫状況: 在庫あり

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日本現代美術とマルセル・デュシャン

平芳幸浩 著

  • 体裁
    A5判上製・344+口絵4頁
  • 刊行年月
    2021年04月
  • ISBN
    978-4-7842-2011-3

著者・編者略歴

ひらよし・ゆきひろ

内容

なぜこれほどまでに、日本はデュシャンを好んできたのか。

本書は、1920年代から80年代における日本の美術界および文化批評の場でのデュシャン受容の様態を確認し、日本の前衛美術や批評言語がどのように自らの方向性を見出してきたかを分析・考察する。「芸術家」としてのデュシャン理解の多様性と揺らぎを、キュビスム、ダダ、シュルレアリスムを辿りながら確認し、「反芸術家」としてのデュシャン像が、瀧口修造や東野芳明の言説を介して日本現代美術に与えた影響の本質を抉り出し、「超芸術家」としてのデュシャンが、無限のテクストを産出しつつ、いかに"日本的なるもの"へと帰着していくかを浮き彫りにする。実物が眼前にないままに、その影だけを追いながら作品と言説が積み上がる日本のデュシャン受容の様相は、西洋化と土着化とに分裂しながら突き進んだ日本現代美術の姿を映す鏡となる。


【担当編集者より】
なぜか自分はマルセル・デュシャンを知っている、だがいつの間に知ったのだろう。
それは高校生の時のこと、建築を学ぶ友達から誘われたある展示イベントのチラシには、「スーパートイレット」の文字と、便器の写真が! 今思えば、あの展示にはきっとデュシャンの作品「泉」(便器)が含意されていたに違いない……。これほど無意識に、自然に、私はデュシャンを受容していたことを、あらためて思い出していました。
本書の中心となるのは、デュシャンをめぐるテキスト群であり、本人は「不在」。この本人がいない(そして、来ない)日本でよく知られ、レプリカ作品まで作られているという、デュシャン受容の謎の解読は、現代美術の日本における受容史読解へとつながります。
本書では、デュシャンをめぐるテキストが、ところどころ、詩文のように流れていますが、そのテキストをマットな金色が彩り、表紙にあしらわれた現代美術作品はデュシャン受容の世界観を見事に表しています。この贅沢な装丁とあわせて、お楽しみください。

目次

はじめに

第一章 芸術家マルセル・デュシャンの日本への移入
1 西洋モダン・アートの移入とデュシャン受容
 1-1 キュビスムとダダ
 1-2 アメリカとデュシャン
2 日本の超現実主義とデュシャン ―瀧口修造と山中散生―
 2-1 日本におけるシュルレアリスム受容とデュシャン
 2-2 孤高の芸術家としてのデュシャン
3 レディメイドと見立て ―日本の伝統との接続―
 3-1 瀧口修造とシュルレアリスム
 3-2 シュルレアリスムから超現実主義へ
 3-3 日本の幻想性の伝統とオブジェ

第二章 戦後美術、反芸術ムーヴメントにおけるデュシャン
1 シュルレアリスムの再検討からネオ・ダダへ
 1-1 岡本太郎とアヴァンギャルド
 1-2 「シュウルレアリスム研究グルウプ」と戦後性
 1-3 オブジェの再発見
2 反芸術論争におけるデュシャン理解 ―批評言説との関係から―
 2-1 東野芳明によるデュシャンの再発見
 2-2 反芸術論争とデュシャンの沈黙
3 デュシャン受容の多様性 ―物体・観念・言語として―
 3-1 1950-60年代のデュシャン受容の振幅
 3-2 戦後の瀧口修造と『マルセル・デュシャン語録』
 3-3 論理と観念 中原佑介と宮川淳によるデュシャン像

第三章 超芸術家としてのデュシャン
1 東野芳明と中原佑介のデュシャン像再考 ―《大ガラス》読解を中心に―
 1-1 デュシャン受容の転換 藤枝晃雄によるデュシャン批判
 1-2 1970年代の東野芳明と中原佑介
 1-3 解釈の魅惑と逡巡あるいは語り口の魔力
 1-4 作ることへの回帰
2 宇佐美圭司と赤瀬川原平 ―絵画か超芸術か―
 2-1 知的操作とレディメイド 宇佐美圭司の絵画
 2-2 宇佐美圭司のデュシャン論
 2-3 「模型千円札裁判」から「トマソン」へ ―超芸術家デュシャン―
 2-4 日本の伝統と前衛
3 テクストとしてのデュシャン
 3-1 デュシャン受容の文化的拡散
 3-2 デュシャン読解とテクストの集積
 3-3 実体化するデュシャン ―《大ガラス》東京ヴァージョンとマルセル・デュシャン展―

おわりに あるいは 後の祭り


【付録】
対談 岡崎和郎 × 平芳幸浩 オブジェをめぐって

あとがき
引用図版出典一覧/主要参考文献/索引

紹介媒体

  • 『美術手帖』(2021年8月号)

    2021年7月7日

    中尾拓哉

    書評

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