近代日本の衣服産業
定価
7,700 円(税込)
本体 7,000円
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近代日本の衣服産業

姫路市藤本仕立店にみる展開

岩本真一 著

  • 体裁
    A5判上製・368頁
  • 刊行年月
    2019年10月
  • ISBN
    978-4-7842-1981-0

内容

日本の衣服産業は、19世紀中期からの約1世紀間に目まぐるしく進展した。しかし急速な産業化はこの分野の学術研究を混乱させ、いまだ十分な議論は積み重ねられていない。
本書では、兵庫県姫路市の小規模裁縫業者(藤本仕立店)の家文書を主な史料としながら、その創業から廃業までの姿を追った。戦時経済統制や他産地の動向など、時代の流れに翻弄された同家の実態を浮き彫りにすることで、新たな切り口から近代衣服産業の展開を描く。

【著者メッセージ】
 兵庫県姫路市の小規模仕立業者の史料をもとに、約半世紀にわたる経営展開を叙述。生野銀山の鉱業を背景に、姫路市藤本仕立店は19世紀末に仕事着の製造販売から創業しました。
 1910年代以降、学校教育の展開や柔道教育の定着に伴ない、販路を拡大していきました。1930年代末から終戦にいたる戦時経済統制の段階では、藤本仕立店は過酷な経営を強いられ、自営業・中小企業の危機に立ち向かうこととなりました。工業組合参加か商業組合参加か、組合継続か企業化かといった経営アイデンティティを問う難題も経済統制は同店に突きつけます。統制関連の法令と藤本仕立店の史料を突き合わせることで、統制の論理(マクロ)と小規模経営の論理(ミクロ)とを結びつけることができました。
 さらに、戦時期の商工省と軍部が牽引した複雑な流通経路が地域社会を分断した過程をはじめ、陸軍被服廠に比べ実態が明らかでない海軍衣糧廠の成立から取引関係までを詳細に論じた補論、繊維素材や衣服形態から丁寧にファッション史を見直した補論も含め、政治経済史とファッション史の両論から、近代日本の衣服産業を縦横無尽に描いています。

【担当編集者より】
「衣服」という身近なテーマから、従来の経済史研究に一石を投じようとする挑戦的な一書です。著者の約20年にわたる藤本家(文書)との付き合いをまとめた研究成果は、一小企業のビジネス・ヒストリーとしても濃密で面白く、藤本仕立店に関連した同時代の組織について、ニッチなトピックスが随所に散りばめられています。中でも、これまであまり知られていなかった陸海軍衣糧廠についてはかなり詳しく紹介されており、コアな戦時マニアにもおすすめです。

目次

序章 本書の主題と藤本仕立店の概要
補論1 近代日本の衣服産業史

第Ⅰ部 藤本仕立店の商品・生産・流通

第一章 生産体制と流通体制
第二章 取扱商品の主な形態―和服の商品化―
第三章 取扱商品の構成―多種性の要因と意義―
補論2 近現代日本で商品化された衣服

第Ⅱ部 戦時体制と衣服産業の再編

第四章 一九三〇年代までの販売圏の展開とその背景
第五章 戦時経済統制下の衣服産業
第六章 戦時経済統制下の藤本仕立店
補論3 第二海軍衣糧廠姫路本廠と生産組織
第七章 戦時経済統制下の業態と取引状況
第八章 資産の動向


終章 近代日本の衣服産業と藤本仕立店研究の意義

紹介媒体

  • 『経営史学』第55巻第3号

    2020年12月25日

    橋口勝利

    書評

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