著者・編者略歴

はまはた・けいご…1978年生.龍谷大学大学院文学研究科博士課程単位取得.博士(文学).現在,高野山大学文学部助教.主な論著に,「『源平盛衰記』「髑髏尼物語」の展開」(『軍記物語の窓』第四集,和泉書院,2012年),「『源平盛衰記』「長光寺縁起」の生成」(『国語と国文学』2013年4月号)など.

内容

平家物語は、単なる本文異同にとどまらず、享受と改変が繰り返され、様々なヴァリエーションを生み出していった物語である。治承寿永の源平争乱という“歴史”を題材に、様々な“物語”――諸本を生成してきた編者たちの思惑とは、何であったのか。本書では、平家物語諸本の比較を通して独自の表現や記事、改変された部分をあぶり出してその基盤を追究し、物語生成の動機や場、背景をつぶさに考察する。

目次

 はじめに
  本書の問題意識/本書の構成

第1編 延慶本平家物語と『宝物集』
 第1章 燈台鬼説話の位置
  諸文献の燈台鬼説話との比較/『宝物集』諸本との関係/延慶本の方法
 第2章 「六代高野熊野巡礼物語」の展開
  『宝物集』と延慶本「六代高野熊野巡礼物語」の比較/他の諸本における「六代高野熊野巡礼物語」の展開/六代の「出家」

第2編 長門本平家物語の展開基盤
 第1章 位争い説話の展開
  平等坊の慈念僧正延昌/「和尚の末の門弟」/尊勝陀羅尼の効験/長門本の独自記事の源泉
 第2章 三鈷投擲説話の展開 
 平家物語諸本における三鈷投擲説話/三鈷投擲の目的/相伝される「三鈷」/「金松」「三鈷松」成立の背景

第3編 南都異本平家物語と熊野三山
     ―「維盛熊野参詣物語」をめぐって―
 熊野三山参詣の経路/「那智」の称揚とその背景/「那智三山」の称揚/山籠もり修行と「後生」

第4編 『源平盛衰記』と地蔵信仰
 第1章 西光廻地蔵安置説話の生成
  西光廻地蔵安置説話の独自性/『盛衰記』における西光堕地獄の可能性/西光と地蔵/六地蔵の利益/造像の功徳
 付 章 西光と五条坊門の地蔵
      ―西光地蔵安置伝承の系譜―
古本系諸本との比較/西光五条坊門地蔵安置説話の生成/西光地蔵安置伝承の系譜/「五条坊門」と西光/「五条坊門」(壬生寺)の地蔵
 第2章 忠快赦免説話の展開
  他文献との比較/忠快の母/忠快所持「三寸ノ地蔵菩薩」像の造形/折れた左手/忠快赦免説話の現世利益
 第3章 「髑髏尼物語」の展開
  諸本における「髑髏尼物語」の位置/『盛衰記』における重衡の若君/『盛衰記』における救済の方法/「髑髏尼物語」の移動
 第4章 「重衡長光寺参詣物語」の生成
  平家物語諸本における重衡東下り/「長光寺縁起」と太子伝/「長光寺縁起」の生成環境/重衡と維盛―〈対〉の意識―

第5編 「共通祖本」の生成基盤
 第1章「旧延慶本」における阿育王伝承
  「旧延慶本」から四部本へ/史料における増位寺の性格/阿育王伝承の流布/阿育王八万四千塔伝承が繋ぐ増位寺と「章綱物語」
 第2章 「旧南都異本」と『高野物語』の関係
  延慶本・長門本・南都異本と『高野物語』本文の関係/『高野物語』における観賢僧正説話の構成/「旧南都異本」再編集の方法と意図

 おわりに
 平家物語の「唱導性」/敗者救済の眼差し



初出一覧
あとがき
索引(人名・事項・諸本)

紹介媒体

  • 『日本古書通信』3月号

    2015年3月

    受贈書目

  • 『日本文学』64巻12号

    2015年12月10日

    平藤幸

    書評

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