内容

『古画備考』…狩野派の幕府お抱え絵師、狩野栄信の次男、朝岡興禎(1800~56)により、江戸末期編纂された原本『古画備考』は、聖徳太子の時代から江戸末期までの日本の絵画に関する情報を48巻53冊にまとめた大部な書物で、前近代に成立したあらゆる画題、画派、画人を網羅する。近代以降、多くの写本が作られ、現在、活字本の『増訂 古画備考』は日本美術史の基本図書とされている。

本書は、東京藝術大学附属図書館に所蔵される朝岡興禎自筆の原本『古画備考』を中心に、古画備考研究会が取り組んできた共同研究の成果。

活字本の蔭に隠れ今まで知られなかった原本を徹底的に解剖することにより、江戸時代後期に『古画備考』を〈書画情報〉総合集積の場として、大規模に繰り広げられていた古画研究ネットワークの実態を浮かび上がらせる。また、太田謹の『増訂 古画備考』(活字本)や大量に残る写本諸本から『古画備考』の受容の様相を検討し、近代の美術史学に果たした役割を多くの新知見を盛り込んで明らかにする。

江戸後期の知識人による知のネットワークが幕末から近代にかけての日本の歴史に寄与した一端を解明する17論文・3コラムで構成した総合的論文集。

目次

総論:『古画備考』に見る朝岡興禎の日本絵画観(玉蟲敏子)

Ⅰ 各巻からの報告
『本朝画史』と『古画備考』の関係(五十嵐公一)
『古画備考』巻二〇上「雪舟」について(畑靖紀)
長谷川左近伝を読む(野口剛)
荒木千洲旧蔵『崎陽名画録稿』と『古画備考』(成澤勝嗣)
南画史の視点で見た『古画備考』(星野鈴)
(コラム)番町朝岡邸の乙女椿(玉蟲敏子)
田能村竹田の「自娯」と「拙」(黒田泰三)
『古画備考』における谷文晁の書画情報(鶴岡明美)
『古画備考』所載土佐家伝についての覚書(相澤正彦)
『古画備考』が伝える長隆写生図(加藤弘子)
『古画備考』巻三五「光悦流」の問題(玉蟲敏子)
(コラム)狩野晴川院が描いた弟三次郎の後姿(松原茂)
狩野宗秀「遺言状」をめぐる考察(並木誠士)
英流の書画情報(井田太郎)
池上本門寺所在の狩野家墓碑と『古画備考』(安藤昌就)

Ⅱ 『古画備考』と近代
(コラム)『古画備考』の諸本(玉蟲敏子)
フェノロサの浮世絵観と『古画備考』(鶴岡明美)
藤岡作太郎と『古画備考』(村角紀子)
昭和の『古画備考』(江村知子)


執筆者のネットワーク ―あとがきに代えて―


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