著者・編者略歴

(おおさわ・よしひろ)
1948年生。東京大学教養学部教養学科卒業。同大学院人文科学研究科比較文学比較文化専門課程博士課程中退。東京大学大学院総合文化研究科教授や日本比較文学会理事、国際比較文学会東アジア研究委員会委員長などを歴任。東京大学大学院超域文化科学専攻比較文学比較文化コースの指導に当たり、主任在職中の2005年に急逝。【主要著書】『ナショナリズムの明暗』東京大学出版会、1982年

内容

東京大学大学院で比較文学の指導に当たり、在職中に急逝した氏の研究成果。その主題は夏目漱石、漱石を中心とした日本文学の他言語への翻訳、外から見た日本文学と日本文化、そしてイギリスと世界との関わりである。30年以上にわたる多彩な研究の全体を広く学界に提示する遺稿集。

目次

    Ⅰ
比較研究の将来
比較文学研究と翻訳
共通言語・支配言語と比較文学
言語芸術と非言語芸術
日本論を支える現代的脈絡

    Ⅱ
夏目漱石『心』における非日常性――その構造と文体
対話から独白へ――複式夢幻能としての『こゝろ』
日本近代文学における告白――漱石の『こころ』を中心に
夏目金之助訳「セルマの歌・カリックスウラの詩」――「旧派の文学」
『彼岸過迄』――比較文学の視点から・漱石を読む
「新しい女」の衝撃――漱石・泡鳴・イプセン

    Ⅲ
「夢十夜」の音声性とその翻訳可能性
言語の間の漱石「夢十夜」第七夜――日本語・英語・韓国語テクストを比較して
言語の間の漱石「夢十夜」第八夜――日本語・英語・韓国語テクストを比較して
言語の間の日本文学――三島由紀夫『仮面の告白』を論じて
現代日本文学英訳におけるテクスト操作――吉本ばなな『キッチン』英訳を例として

    Ⅳ
文化の根について――『ハワーズ・エンド』と『インドへの道』
自立という脅迫――ロレンス『息子と恋人』と、フォースター『モーリス』を論じて
我見と離見――杉村楚人冠の英国旅行記と『ミカド』
多言語状況を生きる作家――タゴールとグギ・ワ・ジオンゴを論じて
タゴールのナショナリズム批判――第一回来日(一九一六年)をめぐって

    Ⅴ
語るべき〈自分〉とは何か――ガンディー『自叙伝』
「開国」の社会心理学――ペリー、ゴンチャローフ、オールコック
比較――日本人は猿に見えるか
日本女性の不可解性と理想化――『お菊さん』と『蝶々夫人』
             
    Ⅵ  
『心中天の網島』――遊女の誇り
伝統を夢みる「私」――近松秋江『黒髪』の分析
近現代日本の文字図像テクストに描かれた婿養子――織田作之助「家風」、谷崎潤一郎『細雪』、長谷川町子『サザエさん』
現代日本社会の男言葉・女言葉――吉本ばなな『キッチン』『TUGUMI』を論じて

    Ⅶ   
“Censorship”in Translation:
Political Correctness in Hugh Lofting's
  <i>The Story of Doctor Dolittle</i> And Banana Yoshimoto's <i>Kitchen</i>
Beyond the <i>Genbun Itchi</i> Movement: Natsume S&#244;seki's Writing in <i>Kokoro</i>
Beyond Centrism and Regionalism: Comparative Literature in Japan


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