著者・編者略歴

(こもり まさあき)1961年茨城県桜川市生れ.筑波大学大学院修士課程教育研究科修了.現在 宮内庁書陵部首席研究官.博士(文学 筑波大学)
〔本書収録以外の主要論文〕「中世後期東国における国人領主の一考察-常陸国真壁氏を中心として-」(『茨城県史研究』62号、1989年)「中世後期九条家の家司について-唐橋氏を中心として-」(『史境』28号、1994年)「常陸国久慈西郡と金沢称名寺-瓜連の歴史的位置と替用途をめぐって」(佐藤博信編『中世東国の社会構造』岩田書院、2007年)「室町期公家社会の一断面-九条政基詠五十首和歌と甘露寺親長-」(阿部猛編『中世の支配と民衆』同成社、2007年)など

内容

寺社の造営事業は、寺社を中心とする経済活動―寺社領経済―の発展に大きな効果をもたらした。本書は、鎌倉府体制下にあった室町期の東国社会に、寺社造営事業と寺社領経済が与えた影響を考察する。「香取文書」など中世東国の「売券」の長年にわたる分析に基づく成果。

目次

序章
  第1節 中世東国史研究の現状と課題
    (1)中世東国史研究と自治体史編纂
    (2)領主制研究と東国史
    (3)鎌倉府研究と流通史研究の進展
    (4)寺社領および造営研究の成果と課題
  第2節 本書の視角と各章のねらい

第1章 寺社造営の推進主体と鎌倉府
  はじめに 
  第1節 鎌倉府の成立と寺社政策
    (1)鎌倉府体制の成立
    (2)鎌倉府権力と寺社統制
  第2節 造営における神官・僧侶の役割
    (1)神官の役割
    (2)僧侶の役割
  第3節 門徒集団の役割と造営
    (1)黄梅院の成立と饗庭命鶴丸
    (2)華厳塔の造営と奉加銭      
    (3)門徒集団と用脚
  第4節 造営の組織と工匠集団
    (1)造営の組織
    (2)建築資材
    (3)番匠の組織
  おわりに

第2章 寺社造営の経済的基盤と鎌倉府
  はじめに
  第1節 寺社造営の隆盛と鎌倉府
    (1)14・15世紀東国内の寺社造営
    (2)地域社会と造営
  第2節 鎌倉府と造営基盤
    (1)造営事業の経済的基礎
    (2)鎌倉府の経済政策
  第3節 富有人注文の創出
    (1)富有人注文諸本の伝来
    (2)富有人注文の作成
    (3)考証
  第4節 経済関の設置と造営事業
    (1)関所の史料とその考証
    (2)関所設置地の地理的特質
    (3)諸関破却と山伏
  おわりに

第3章 寺社領における有徳人と売買・貸借
  はじめに
  第1節 寺社領における有徳人の形成と経済
    (1)宿の形成と有徳人
    (2)有徳人の宗教活動と経済活動
  第2節 寺社領における売券
    (1)東国の売券
    (2)14世紀における売主の階層と売券の特質
    (3)「香取文書」における売券
    (4)「香取文書」中の売券の特質
  第3節 常陸惣社と神官の売買
    (1)常陸国府中における惣社
    (2)「在庁・神官・供僧共同体」と土地所有・譲与
    (3)神官層の土地売買
  第4節 寺社領における借用状の一形態
    (1)借用状にみえる「文之身」文言
    (2)「文之身」文言の成立
    (3)当該期の自然災害と東国社会
  おわりに

第4章 寺社領経済と蔵本の活動
  はじめに
  第1節 寺領年貢の輸送と蔵本
    (1)称名寺領年貢の輸送-上総・下総国の場合-
    (2)「金沢御蔵」と蔵本
    (3)公珍の役割と称名寺
  第2節 寺社領における蔵本と商業
    (1)香取社領における蔵本の初見史料
    (2)蔵本の階層
    (3)蔵本の活動
  第3節 蔵本の展開とその活動
    (1)鹿島社領の蔵本
    (2)結城氏領の蔵本と僧侶
  第4節 長者伝説と蔵本
    (1)『香取私記』にみえる長者伝説
    (2)香取社領の蔵本と御手洗氏
  おわりに

終章
  第1節 結論
  第2節 課題

あとがき
索引

紹介媒体

  • 『日本歴史』第737号

    2009年10月1日

    横田光雄

    書評と紹介

  • 『千葉史学』第55号

    2009年11月25日

    川本慎自

    新刊紹介

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