日本図書館協会選定図書

著者・編者略歴

(あおき・きょうこ)・・・1950(昭和25)年大阪府生まれ.佛教大学大学院修士課程(国文学専攻)を経て、2005(平成17)年、佛教大学大学院博士課程文学研究科国文学専攻修了・博士(文学).佛教大学非常勤講師.大阪医療福祉専門学校非常勤講師.京都府医師会看護専門学校非常勤講師.日本近代文学会、昭和文学会等に所属.

内容

太宰治は、史実や先人の文学や絵画、フォークロア等の資料を組み替えることにより、原資料よりさらに結晶度の高い作品を構築した。周辺の人物を投影させた自己破滅型の私小説作家ではなく、「昭和」という新しい時代を如実に反映している作家といえよう。本書では、太宰文学における女性像、太宰文学の素材についてその文学性を明らかにする。

目次

序章 はじめに
第一部 太宰文学の女性像
  第一章 太宰治の女性像ー三つの階層を中心としてー
   第一節 はじめに
   第二節 太宰治の女性像
         1 女性の全体像
         2 年齢  
   第三節 女性の階層 
         1 〈高貴〉な女性
         2 〈平民〉の女性
           ?齠 妻像   
           ?齡 母親像  
           ?齦 職業婦人像
         3 〈下層〉の女性
           ?齠 〈田舎〉の女性  
           ?齡 〈最下層〉の女性
   第四節 むすびに

  第二章 『晩年』の女性像ー〈下層〉の女性を中心としてー
   第一節 はじめに
   第二節 〈異類〉の女性  
   第三節 〈傷〉つく女性
   第四節 母親像  
         1 希薄な母親像
         2 〈永遠〉の母親像
         3 〈無学〉の母親像
   第五節 〈沈む〉女性  
   第六節 〈下層〉の女性  
         1 〈無学〉の女性
         2 店で働く女性  
   第七節 むすびに

  第三章 「美少女」の女性像ーギリシャ神話を視座としてー
  第一節 はじめに
   第二節 ギリシャ神話の受容  
         1 太宰作品と古代ギリシャ及びギリシャ神話の関わり
         2 老夫婦の造形
         3 〈真珠〉のような少女像
   第三節 「美少女」の造形
         1 〈青〉い少女
         2 〈野生〉的な少女
         3 〈邪悪〉な少女
         4 少女と「アルテミス」の相違
         5 〈白痴〉の少女
   第四節 「美少女」と健康美
         1 志賀直哉の随筆
         2 女性美の背景
   第五節 むすびに

  第四章 「千代女」の女性像ー「綴方」と「小説」の差異を把握できなかった和子ー
 第一節 はじめに
   第二節 文学者における「綴方」と「小説」の評価
         1 豊田正子の『綴方教室』
         2 野澤富美子の『煉瓦女工』
   第三節 「綴方」評価の齟齬
   第四節 和子の教育
         1 小学校時代
         2 女学校時代
         3 女学校卒業直後
第五節 和子の文体
第六節 和子像
   第七節 むすびに

  第五章 「おさん」の女性像ー妻像をめぐってー
   第一節 はじめに
   第二節 典拠としての「心中天網島」
         1 典拠の特定
         2 「おさん」と「心中天網島」の比較
       ?齠 共通点
題名/構成/語彙/手紙・質入れ/「水」の縁語/仏教用語/笑い
       ?齡 相違点
妻像/夫像/時間・時代背景/心中相手・親戚
  第三節 「おさん」の妻像
         1 〈女性語り〉と妻
         2 「おさん」の夫と妻の比較
  第四節 「おさん」の妻の位相
 第五節 むすびに

  第六章 『斜陽』の女性像ー西洋美術を中心としてー
第一節 はじめに
   第二節 〈貴族〉と西洋美術
   第三節 〈色彩〉の調和
   第四節 〈終末意識〉
   第五節 〈聖母子〉像
   第六節 むすびに

  第七章 『人間失格』の女性像ー『暗夜行路』との比較を中心としてー
   第一節 はじめに
   第二節 母の欠落
   第三節 醜い女
   第四節 水商売の女性
   第五節 「年上」 の女性
   第六節 「コキュの物語」
         1 〈ヨシ子事件〉と〈直子事件〉の比較
         2 ヨシ子と直子の造形
         3 〈ヨシ子事件〉と〈直子事件〉の実態
         4 従来の姦通小説との比較
   第七節 むすびに

第二部 太宰文学の素材

  第八章 「角力」論-「忠直卿行状記」『暗夜行路』の影響をめぐってー

  第九章 「魚服記」論ー『山の人生』との比較を中心としてー   
   第一節 はじめに
   第二節 スワの造形
         1 炭焼き小屋の娘
         2 〈鬼子〉
         3 スワの年齢
   第三節 〈神隠し〉
         1 〈危険〉な時間
         2 〈不思議〉な現象
         3 滝への投身
         4 〈蛇体〉変身
第四節 山の〈禁忌〉
   第五節 〈異界〉の生活
         1 〈辺境〉の地
         2 孤立と貧困
   第六節 むすびに

  第十章 太宰治と絵画
   第一節 はじめに
   第二節 日本画の受容
         1 恐怖体験
         2 芸術家の心理
         3 優れた芸術家
         4 邸宅の表象
   第三節 西洋絵画の受容
         1 画家の苦悩
         2 新時代の表象
         3 主題の表象
         4 場面の設定
         5 人物の表象
         6 画家のエピソード
   第四節 登場人物
   第五節 むすびに

  第十一章 太宰治の書風─「偽造太宰治書簡」を中心として─
   第一節 はじめに
   第二節 偽造とされる川端康成宛の葉書と直筆と考えられる書簡の比較
         1 宛先「神奈川懸鎌倉浄妙寺宅間ヶ谷」の比較
         2 宛名「川端康成様」の比較
         3 差出人住所「千葉懸船橋町五日市本宿一九二八 太宰治」との比較                                 4 文面の比較
       ?齠 漢字について
       ?齡 平仮名について
   第三節 太宰治の書風について
   第四節 むすびに

  第十二章 『もの思ふ葦』の執筆資料―ダヴィンチ伝を中心に―
   第一節 はじめに
   第二節 太宰文学におけるキリスト教美術の受容
   第三節 ダヴィンチ伝の受容
   第四節 むすびに

  結論にかえて

  後 記

紹介媒体

  • 『昭和文学研究』54

    2007年3月

    山岸郁子

  • 『キリスト教文学研究』24

    2007年

    洪明嬉rn洪明嬉

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