内容

豊田佐吉の発明から「愛・地球博」に到るまで、その間に展開された東海地方の創造的活力、それは単に外国模倣の浮薄な知力だけではない、伝承されたローカルな有形無形のさまざまな力に推されたものである。それを「発展における日常性」と呼びたい。
とかく平面化され断片化されがちな今日の歴史認識を、今一度、実体として呼び戻す。そしていくつかのこの地方にかんする発明と技術移転の実例を紹介し、そこには確実に、道徳、価値観、人間関係を含む地域文化がはたらいて支えたものであることを証明する。そして今日の「知財化」という新しい環境においても、成果を着実にするには、このことの継承が必要なことをあらためて提唱したい。
このエッセイ集は、著者が技術史の国際会議において、最近二十年間に報告した「日本の技術移転の実例」をまとめた個人史的研究論集でもある。

目次

導入 ─目的と内容─

序論
 1 ミレニアム余話
 2 日中の庭文化 ─「和魂」と「中体」─
 3 豊田佐吉における継承と移転

本論 ─継承と移転─
 1 飛騨の曲げ木椅子製造
 2 トマト・ケチャップの国産化
 3 柔軟オブラートの発明 ─小林政太郎─
 4 靴の製造と消費 ─世俗の中の文明─
 5 教育における選択

付論
 1 「暗黙知」
 2 システムということ
 3 技術景観論 ─碓氷峠の例─

末論 ─T.L.O時代の技術移転─
追録 「2005年愛・地球博」管窺

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