内容

・歴史研究において、「地域の視座」や諸学問の協業的営みの必要性が叫ばれて久しい。本書は、具体的にどのような問題意識と切り口をもって史資料を読みとっていくのかという、古代地域史研究の方法論的深化を模索する試みの一つの成果。・人びとの再生産構造をいつも念頭にすえ、それぞれの時代のなかで、再生産はどのような構造と展開をみせていたのか、そこにおける課題は何であったのか、これを統括する主体はどこにあり、人びととのあいだにどのような政治的・社会的秩序が形成されていたのか、基本的な場である耕地や山野河海との関係性はどのように維持されていたのか等々、いくつかの地域における具体的な事例を通して究明。

目次

序  章 問題の所在と本書の課題

第一章 大宝二年「豊前国戸籍」とその歴史的背景
はじめに
第1節 大宝二年「豊前国上三毛郡戸籍」について
第2節 大化前代の豊前・山国川流域と大和王権
おわりに

第二章 飛鳥池遺跡出土「加毛評柞原里人木簡について
はじめに
第1節 「加毛評柞原里人」木簡の出土
第2節 「加毛郡柞原郷阿斐」木簡とカモ・ミハラ地
第3節 安芸・備後「国界」地域の歴史的特質
第4節 加茂評柞原里の移管と令制国安芸備後
おわりに

第三章 墾田法と初期荘園―東大寺領越前国桑原荘を中心として―
はじめに
第1節 東大寺庄園文書目録と桑原荘
第2節 初期庄園の類型と墾田永年私財法
第3節 桑原荘の成立と墾田永年私財法
第4節 桑原荘の公田化とその消滅
おわりに

第四章 九世紀の賜田と土地政策
はじめに
第1節 親王賜田設定の特徴
第2節 賜田の多義性と空閑地
第3節 平安初期の土地開発と賜
おわりに

第五章 国司行政と祥瑞の出現 ―承和初年佐渡国の事例を中心にして―
はじめに
第1節 佐渡国における慶雲出現について
第2節 天長末期から承和初期の佐渡
第3節 佐渡国司苛政上訴事件について
第4節 慶雲の出現と佐渡国の政治
おわりに

第六章 平安時代初期の瀬戸内海地域―平安初期の「海賊」問題を中心として―
はじめに
第1節 「海賊」問題の経緯
第2節 「海賊」の階層性と地域社会
第3節 郡司の増員と郡の分割
第4節 「海賊」問題と対外関係
おわりに

第七章 続命院の創置とその経済的基盤
はじめに
第1節 続命院の創置とその背景
第2節 続命院の経済的基盤とその歴史地理学的考察
おわりに

第八章 日田大蔵氏の祖・大蔵永季について
はじめに
第1節 大蔵氏の伝承と史実
第2節 相撲節と相撲人
第3節 相撲人・大蔵永季の実像
おわりに

終章にかえて

あとがき
索引(研究者名/地名・地域編成単位/史料名/一般事項/氏姓)

紹介媒体

  • 『日本歴史』719

    2008年4月1日

    小林昌二

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