内容

奈良絵本とは、御伽草子などの庶民的文芸の興隆にともない、室町時代末期から江戸時代前期にかけて作られた濃彩色絵入の写本で、本書は、龍谷大学図書館に現存する7作品8本の伝本を影印・翻刻にて広く研究の場に提供する。解説では、各本の伝本としての系統や本文の特質について明かす。

目次

【上巻】

竹取物語(中川文庫本)
下冊を欠く上・中二冊の零本。中型の横本。挿絵は上巻に六図、中巻に五図。本文が正保三年版本と一致していることが注目される。

竹取物語(三冊完本)
列帖装。寛文・延宝頃の筆写と推定される上中下の三冊本。挿絵は各巻に各四図。本文系統は、正保三年版本と多くが一致する。

ちやうこんか(長恨歌)
袋綴。中型横本の三冊本(上中下)。挿絵は上・中巻に各五図、下巻に四図。伝存本の少ない貴重な一書。本文が平仮名書きであるのが特色。

【下巻】

住よし物語(住吉物語)
列帖装半紙本の三冊本(上中下)。挿絵は各巻に各五図。諸本の中でも流布本系の最も少ない部類に属す。

ふしの人あな(富士の人穴)
中型横本一冊。挿絵は五図。残存四点のうちに入ると思われる貴重本であるが、全三冊のうち下巻に相当する部分のみの零本。

志加物語(志賀物語)
半紙横型本で巻下の一冊。挿絵は五図。諸本と比較して本文の叙述がやや詳しいのが特色。

ふんしやう(文正草子)
袋綴の中型横本で下巻欠の上・中巻二冊本。挿絵は上・中巻に各五図。御伽草子の中でも最も読まれた作品。部分的に特異な本文を有し、寛永板系統の本文研究に貴重な一書。

うらしま(詞書のみ)
胡蝶装。近世中期頃の書写とみられる写本一冊(大型本)。散らし書きや挿絵を欠くが、本文は御伽草子のものに近く、絵を略し本文だけ写したものと思われる。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加