内容

幕藩権力がどのような国際的環境のもとに国家支配の枠組を形成したのかを、「公儀」幕藩権力と連合オランダ東インド会社との関係史を基軸に、国際秩序の変動や東アジアおよびヨーロッパ社会の変革の過程の中に捉えなおした意欲作。

目次

例言
 第一部 序説 異文化の受容と選択

 第一章 幕藩制国家の成立と東アジア国際秩序の転換
  はじめに
  一 古代・中世における東アジアの国際的秩序の体制の推移と日本
   1 「冊封体制」─中国を中心とする国際秩序の体制とその理念・構造・推移
   2 明朝の成立と日中関係─中世における日本の外交体制─
  二 中世的外交体制の解体
  三 豊臣政権、「征服」と「統属」の無窮動
   1 「征服」と「統属」─「武威」の「政権」
   2 豊臣政権の対外政策の限界
  四 徳川政権と対外関係
   1 「和親外交」─徳川家康の外交ポーズ─
   2 「武威」と「交隣」
   3 日朝媾和交渉─虚構の「武威」─
   4 「柳川一件」
  五 「鎖国制」と東アジアの国際秩序

 第二章 適応と排除─幕藩制国家の形成と禁教の論理-キリスト教受容をめぐる日本の外来文化摂取の特質-
  一 日本の社会的進化と外来文化
  二 巡察使ヴァリニアノと適合政策─日本の文化・社会に対する洞察─
  三 適合政策の展開と布教上の諸問題
  四 変革期としての十六世紀
  五 二つの権力編成原理
  六 権力闘争としてのキリシタン禁教政策
  七 十七世紀における「禁教」の論理の展開
  八 国家支配のイデオロギーとしての「禁教」
  九 鎖国、外来文化の選択的受容

 第三章 潜伏キリスト教徒と隠れキリシタン-近世日本におけるカトリシズムの受容-
  プロローグ
  一 潜伏キリスト教徒と「かくれキリシタン」
  二 「かくれキリシタン」─分布と組織
   1 分布地域の歴史的条件
   2 信仰組織
  三 納戸神─教義・祈祷・聖像の伝承─
  四 潜伏時代への信仰の軌跡
  エピローグ

第二部 統一的国家支配の形成と対外関係の展開

 第四章 統一権力形成期における国際的環境
  一 イベリア両国の海外進出事業の性格
   1 航海領域と布教保護権
   2 デマルカシオン
  二 ポルトガルの東アジア進出とイエズス会
   1 ポルトガルの中国接近
   2 「エスタード・ダ・インディア」
  三 東アジアにおけるポルトガルとエスパニア
   1 東半球における境界線の問題
   2 エスパニアの中国接近と西葡合併
  四 エスパニア系宣教師団の日本渡来をめぐる諸問題
   1 アロンソ・サンチェスの中国遣使
   2 在日イエズス会士の対応
   3 宣教師のいわゆる軍事計画の背景
  五 イベリア両国の「航海領域」の崩壊
  むすび─第四章の総括

 第五章 公儀と異国
  一 統一権力の形成と対外関係
   1 豊臣政権の対外関係
      中世的外交体制の崩壊/豊臣政権と「外交権」「交易権」/豊臣政権の対外政策の限界
   2 家康政権の対外政策
      国交と交易/朱印船制度の創設/異国船通航免許状
   3 禁教の論理をめぐって
      二つの禁教令/イエズス会士と跣足修道士との対立/禁教政策への転換/岡本大八事件と幕府の禁教令
  二 公儀と異国
   1 オランダの日本接近と定着
      連合東インド会社初期の対日接近政策/平戸商館設立時の東インド会社の状況/初期の平戸商館の会計帳簿/戦略的拠点としての平戸商館/蘭英防衛船隊と平戸/海賊から上人への転換
   2 幕藩制国家機構の整備と対外関係
      台湾事件─その背景/大使派遣と敵礼の問題/総督スペックスの洞察と対応/鎖国政策の進展─オランダ人への規制とその対応
  三 鎖国制の完成─むすびにかえて
   1 禁教と鎖国
      国家闘争としての「禁教」/国家支配のイデオロギーとしての「禁教」
   2 市場問題と鎖国
      生糸貿易の実態/流通政策の転換/長崎奉行の役割/糸割符仲間の改組
   3 異国との関係の定置と鎖国
      日本的華夷秩序の形成/「通商の国」/「通商の国」中国
   4 ポルトガル船来航禁止の意味
      鎖国をめぐる対外軟派と硬派/「鎖国制」の完成

 第六章 連合東インド会社の対日交渉と情報伝達網-一六四○年代を中心に-
  一 東アジアにおけるオランダ人
   1 「海賊禁止令」と平戸商館
   2 「商人への転換」の模索
   3 オランダ船通航網の脆弱性
   4 「商人への転換」の実態
   5 連合会社とヴェトナム
   6 連合会社の東京接近─総督ファン・ディーメンとインドシナ─
  二 オランダ商館の長崎移転と東インド政庁の対応─総督ファン・ディーメンの対日政策
   1 「商人への転換」と新たな矛盾
   2 長崎移転と諸規制の強化─平戸時代の終焉─
   3 「権現様の御朱印」
   4 一六四二年の総督訓令
   5 日本商館の直面する状況
   6 局面打開のための対策
   7 提出されなかった総督訴状
   8 日蘭交渉と情報の伝達

 第七章 東アジアにおけるオランダ勢力の動向と幕藩制国家-オランダ船と中国船-
  一 ヤハト船リロ号の東京航海とその記録
   1 エルセラックとリロ号評議会宛総督訓令
   2 リロ号の航海に関する訓令
   3 バタヴィアよりトンキン湾に到る航海
   4 リロ号到着時の東京情勢とその後の航海
  二 バタヴィア政庁と東京・広南情勢
   1 広南との関係の推移
   2 連合会社の東京支援の性格
   3 第二次広南遠征計画とリロ号の東京航海
   4 第三次遠征の顛末
  三 南シナ海域のオランダ船の動向と日本─中国船とオランダ船─
  結び─前近代東アジアの「領海」と「公海」の概念をめぐって─

 第八章 ブレスケンス号の南部漂着と日本側の対応-附:陸奥国南部領国絵図に描かれたブレスケンス号-
  はじめに
  一 オランダ人の金銀島探検航海
  二 ブレスケンス号漂着に対する幕府の対応
  三 公儀と異国船の交易
  四 沿岸防備と漂着船
  五 国絵図に描かれたブレスケンス号

第三部 平戸時代日蘭交渉史研究

 第九章 連合東インド会社の初期会計記録と平戸商館
  はじめに
  一 「東インド」全体の帳簿システム
  二 バンタム・バタヴィアの帳簿
  三 各地の商館の帳簿
  四 平戸商館の会計記録
  結び

 第一〇章 平戸オランダ商館の日本人雇傭者について
  はじめに
  一 平戸商館の「商館給与簿」
  二 平戸商館雇傭の日本人使用人数
  三 平戸商館雇傭の日本人の職種
   1 職種について
   2 給与額について
  四 平戸商館雇傭日本人の名寄一覧
  五 補遺─その他の記録から─
  六 平戸商館の終末と日本人雇傭者
  エピローグ─オランダ商館の長崎移転と日本人雇傭者─

 第一一章 平戸オランダ商館日本人通詞貞方利右衛門考
  はじめに
  一 平戸商館通詞利右衛門の履歴
  二 同僚通詞伯左衛門
  三 「台湾事件」前後の通詞利右衛門と平戸商館
  四 ウイルレム・ヤンセンの江戸参府と通詞の起用
  五 貞方利右衛門と平戸商館の取引関係
  六 総括─平戸時代オランダ商館通詞とその周辺
   1 オランダ商館通詞の濫觴
   2 記録の上での日本人通詞
   3 長崎移転後も出仕した平戸商館通詞
   4 通詞の使用言語
  エピローグ─オランダ語通詞の登場─
  附記

 第一二章 平戸時代におけるオランダ商館の献上品と贈答行為
  はじめに
  一 長崎オランダ船貿易と献上品─十七世紀中葉の事例として─
  二 蘭人参府拝礼の社会的背景─初期の幕藩制国家の支配体制と日蘭関係─
  三 蘭人参府拝礼の濫觴─一六〇九年─
  四 「平戸時代」前半期の蘭人参府と進物
  五 「平戸時代」後半期の蘭人参府と進物
  六 日本の贈答行為とオランダ人
  結び
  あとがき
索引(事項/人名/船名)

紹介媒体

  • 歴史評論8月号

    1999年8月

    米谷 均

  • 日本歴史10月号

    1999年10月

    八百啓介

  • 史学68-1・2号

    1999年1月

    浅見雅一

  • 歴史地理教育10月号

    1998年1月

    山田忠雄

    「図書室」欄

  • 南島史学会53号

    1999年7月

    喜舎場一隆

  • このエントリーをはてなブックマークに追加