奈良公園「鷗外の門」と鹿

先日、展覧会鑑賞とあわせ、奈良公園に遊びました。
その日のベストショットがこれ。
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明治の文豪・森鷗外は、陸軍を退官したのち
奈良も含む帝室博物館の総長をつとめました。
その間、奈良を訪れた際の宿所とした官舎の跡に、
いまではこうしてその門だけが残っているとのこと。
構図もへったくれもないスナップ写真ですが、
澄まし顔で門をくぐる鹿の姿がどうにもほほ笑ましい。
この右方には「鷗外の門」と題署のある歌碑が置かれてあり、
猿の来し官舍の裏の大杉は
折れて迹(あと)なし常なき世なり
の歌が刻まれてあります。
この歌の収録される「奈良五十首」には、次のような歌もあり、
写真のような情景とあわせてみれば、よりぴったりくるようにも感じられます。
春日なる武甕椎(たけみかづち)の御神に
飼はるるしかも常の鹿なり
「常の鹿」という言い草は、
神使といえど飯も食らえば糞もするといったような、
からっとした、あけすけな気分を感じさせて、
そのあたり、我が国固有信仰のおおらかさがよくあらわれているようで、
ゆかしくも思われます。
そういえば、例によって鹿せんべいを購入して
そこらにいる鹿たちに与えたわけですが、
以前の記憶よりもずっと果敢に、
群れをなして猛然と押し寄せる勢いにいささか驚き、
思い返せば、そんな姿はまさに「常の鹿」、
我々と同じただの生き物というにふさわしいものでありました。
(佐藤)