神仏います近江 大津編

「神仏います近江」は、滋賀県のMIHO MUSEUM滋賀県立近代美術館大津市歴史博物館
三館が合同で開催している企画展です。
前回の記事 神仏います近江 信楽編瀬田編 も合わせてご覧ください。
前回までは仏さまのお話ばかりでしたが、企画展のタイトルは「神仏います近江」。
神さまの展示は、ここ大津市歴史博物館で行われています。
日吉と書いて「ひえ」と読む日吉大社は
大津市坂本にある比叡山の守護神として、長く崇敬を受けてきました。
「ひえ」は「ひえい」であり、まさに比叡山の山の神さま。
日吉の神々を祭る「山王祭」は3月上旬から4月15日まで、約1ヶ月半の長いお祭りが行われ
湖国(滋賀県)三大祭のひとつに数えられています。
今回の展覧会では、近江各地に遍在する「神像」と江戸時代の山王祭をはじめとする「祭」
2部構成となっており、地域に息づいた神々のすがたを浮かび上がらせています。


まずは「神像」ですが、恥ずかしながらこれだけの数の神像を目にしたことは今までなく、
仏像ならなじみ深いのになぁ、などと感じながら見入ってしまいました。
男女の神が対になっている像、僧形の像、などさまざまな姿をしている神像ですが
仏像と決定的に違うのは、手です。
仏さまの多くは手で印を結んだり、宝珠や剣などの持物を持っています。
しかし神さまは、袖で手を隠し(拱手・きょうしゅと言います)、笏(しゃく)をとるというスタイルが一般的です。
「笏」とはおじゃる丸が持っているアレですね。
お地蔵さまのすがたをした神像が多く展示されており、一見すると仏像のように見えますが
地蔵菩薩が持っているべき宝珠・幢幡・錫杖を持っていない像なので、これは神像だということになります。
前近代の日本では、仏が神の姿を借りてあらわれる、本地垂迹という宗教観が浸透していました。
お寺のなかに鳥居があったり、神社のなかにお堂があったり。
神さまと仏さまは切っても切れない関係だったのです。
坂本の日吉大社と比叡山の延暦寺も、神仏習合し一体となって信仰されていました。
* * *
そんな日吉大社の「山王祭」は、今も受け継がれている大きなお祭りです。
展示の後半は、江戸時代に描かれた山王祭の屏風絵や、神事の写真などを紹介しています。
とりわけ印象的なのは、祭のようすを描いた六曲一双の見事な屏風です。
右隻には勢いよく御輿を担ぐ人々、左隻には神輿を御座船に乗せて悠然と湖上を渡るようすが描かれ
「山王祭礼図」として形式化されるほど多くの作品を残しています。
山の神が下りてきて船渡御をする、というのも、山と湖の距離が近い琵琶湖畔ならではの神事ですね。
美術品としても歴史資料としても興味深く、必見です。
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滋賀県は地味だと思われがちですが(過去記事:ゆるキャラの王様参照)
実は貴重な文化財の宝庫だということを改めて感じさせられました。
ぜひこの機会に滋賀県を訪ねて、神と仏を体感していただければと思います。
「神仏います近江」の連載記事は今回で終了です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(松本)