みをつくし料理帖

先日、人の勧めで田郁著『八朔の雪―みをつくし料理帖』
(「みをつくし料理帖シリーズ」第一作目)を読んでみました。

八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫) 八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
(2009/05)
高田 郁

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物語は、大阪の天災で両親を亡くした主人公の澪が、
江戸の料理屋で働きながら、市井の人々との交流を深めていく人情味溢れるストーリーです。
その中で印象的だったのは、上方風の味付けに自信を持っていた澪が、
自分の作った料理に客から文句を言われてショックを受ける場面。
当時からある東と西の食文化の違いが、丁寧に描き出されている点が興味深い作品です。
東海圏で生まれ育った私にも、こと「食」に関しては、
京都に来てみて驚いたことがいくつかありました。
よく言われる味噌や出汁の違いはもちろんですが、
地元では珍しかった「京野菜」が当たり前のように店頭に並んでいること、
そして食料品店の豆腐売場では「絹ごし」のシェア率が遥かに「木綿」に勝っていることなどです。


豆腐は、江戸時代に白米や大根と並んで「江戸の三白」と称され、
広く庶民に親しまれた食材でした。
天明2年に大阪で豆腐の調理法100種を紹介した『豆腐百珍』という本が出版されると、
たちまちベストセラーになり、江戸を巻き込んでの一大食ブームに発展したほどです。
書中では、豆腐料理100品が
「尋常品」「通品」「佳品」「奇品」「妙品」「絶品」の六等級に分類され、
凡例にその分類と品評の理由が記されています。
私が初めてこの本の存在を知ったのは、
杉浦日向子さんの『一日江戸人』の中の記述ですが、
そのレシピが現代の料理人の手で再現された本も出版されています。
福田浩・松藤庄平・杉本 伸子著『豆腐百珍』(2008)

豆腐百珍 (とんぼの本) 豆腐百珍 (とんぼの本)
(2008/01)
福田 浩、松藤 庄平 他

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この度、「特別な材料や下準備が必要なく」「短時間で調理できる」ことをポイントとして、
「尋常品」から「ふわふわ豆腐」、「奇品」から「豆腐麪」の一品ずつを選び、
実際に料理に挑戦してみました。
分量は全て目分量ですが、この再現本の心強い点は、
各料理に「食べてみました」との項目で調理のコツや試食の感想が記されているところ。
記述の通りにすると、シンプルながらも味わい深い豆腐料理が出来上がりました。
一皿から試みるタイムトラベルも、なかなかに楽しいものです。
実は先述の「みをつくし料理帖シリーズ」の巻末にも、
物語に登場する料理のレシピが紹介されているのですが、
自分の力量を鑑みて、こちらへの挑戦はまた別の機会に。
(蒲)