著者・編者略歴

ながさわ・のぶき・・・1983年山形県生.東北学院大学大学院文学研究科アジア文化史専攻博士後期課程修了.博士(文学).日本学術振興会特別研究員(PD)、静岡市観光交流文化局歴史文化課学芸員を経て、現在仙台市博物館嘱託.

内容

織田信長に代表される楽市楽座令は、これまで日本中世における流通政策の完成型として、市場での「自由取引」「旧態破壊」の実現や、近世城下町の成立に結びつく画期的な法令と見なされてきた。
本書では、同時代における他の流通政策や交通網・経済といった、地域ごとの政治的・社会的情勢と法令との相関関係を見ることで、楽市楽座令や楽市場が、地域ごとにいかなる意義をもち、中近世移行期の社会変動にどう位置づけられるのか再考する。

■編集担当者より■
楽市楽座令は経済効果をもたらすための法だと思っていたのですが、一概にそうとはいえないようです。高校までにならうイメージとはまったく違い、かつ地域色が強いのも新鮮でした。

目次

序章 楽市楽座令研究の軌跡と課題
  楽市楽座令研究の軌跡
  楽市楽座令研究の問題点
  楽市楽座令研究の課題


第Ⅰ部 戦国大名と楽市令

第一章 今川氏と富士大宮楽市
  富士大宮・富士氏と市場
  富士郡における市場と交通
  富士大宮楽市の実態

第二章 徳川家康と小山楽市
  小山と大給松平氏
  戦国期徳川氏の流通支配と市場
  小山楽市をめぐって

第三章 松永久秀と楽市
  久秀の流通支配と市場
  「タモンイチラクノトキ」をめぐって

第四章 後北条領国における楽市―世田谷・荻野・白子―
  世田谷新宿
  荻野新宿
  白子新宿


第Ⅱ部 織田氏と楽市令

第一章 加納楽市令再考
  制札をめぐる研究史とその問題点
  楽市場と加納
  永禄一一年制札

第二章 金森楽市令の再検討
  金森の歴史的環境
  金森と楽市
  楽市の展開

第三章 羽柴秀吉と淡河楽市
  淡河楽市をめぐる研究とその問題点
  天正七年制札
  天正八年制札

第四章 安土楽市令再論
  湖東の流通構造と権力
  安土山下町中掟書を読み直す

第五章 「楽座」とは何か―越前橘屋を事例として―
  「楽座」の定義をめぐって
  橘屋と「楽座」
  「楽座」と座役銭
  豊臣権力の座政策―「破座」「無座」―

終章 「楽市楽座令」再考―中近世移行期における歴史的意義をめぐって―
  戦国大名と楽市
  織田氏と楽市・楽座
  楽市の変容―歴史と記憶―


付表 中近世移行期における市場法

あとがき
初出一覧
索引

紹介媒体

  • 『日本歴史』第846号(2018年11月号)

    2018年11月1日

    高谷知佳

    書評と紹介

  • 『年報 中世史研究』第44号

    2019年5月22日

    山下智也

    書評

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