近世の開幕と貨幣統合
定価
7,150 円(税込)
本体 6,500円
在庫状況: 在庫あり

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近世の開幕と貨幣統合

三貨制度への道程

高木久史 著

  • 体裁
    A5判上製・304頁
  • 刊行年月
    2017年08月
  • ISBN
    978-4-7842-1902-5

著者・編者略歴

たかぎ・ひさし・・・1973年大阪府生まれ.1996年神戸大学文学部卒業、2005年神戸大学大学院人文学研究科修了、博士(学術).織田町歴史資料館(町村合併により越前町織田文化歴史館と改称)学芸員を経て、現在、安田女子大学文学部准教授.主著に『日本中世貨幣史論』(校倉書房、2010年)、『通貨の日本史』(中央公論新社、2016年).

内容

 歴史上には、かつて数々の貨幣(通貨)統合が存在した。日本においては、「三貨制度」と呼ばれる貨幣様式の統一が知られている。16世紀に民間で自生的に成立した貨幣システム(金貨・銀貨・銭)をベースに、信長・秀吉・家康政権の時代を通じて、近世的な貨幣統合が政策的に達成された。
 本書は、地域別の定点観測的な事例研究に基づき、その統合過程を復元しようという試みである。

現在の貨幣システムや貨幣統合を考えるためのヒントが、近世開幕期にある!

目次

序章 問題の所在―三貨制度の形成過程を考える
 第1節 日本近世の貨幣統合過程を復元することの現代的意義
 第2節 近年の議論と課題
 第3節 本書の構成

第1章 交通集中点に生まれた近世的銭統合の萌芽―近江の状況(1)
 第1節 近江の銭をめぐるこれまでの議論と地理的環境
 第2節 1560年代以前―階層化と浅井長政の統合政策
 第3節 1570年代以降―ビタ・上銭による統合の方向性
 第4節 16世紀に見られる近世的銭統合の端緒

第2章 金・銀の普及と羽柴秀次のインフラ整備―近江の状況(2)
 第1節 近江の金・銀をめぐるこれまでの議論
 第2節 金―使用階層の広範化と小判・一分金
 第3節 銀―銀商誘致政策、各種銀の併存
 第4節 金・銀の普及契機の差異

第3章 江戸幕府の貨幣統合政策と彦根藩の対応―近江の状況(3)
 第1節 江戸幕府貨幣の基準貨幣化をめぐって
 第2節 慶長~元和期の彦根藩経理記録に見る基準貨幣
 第3節 彦根藩による江戸幕府貨幣の受容

第4章 東西結節点に見られる近世への傾斜―紀伊の状況
 第1節 紀伊の銭・金・銀をめぐるこれまでの議論と地理的環境
 第2節 北部―ビタ・上銭と金・銀の普及
 第3節 南部―ビタ内階層化と狭義の銀遣い
 第4節 銭の再階層化、金統合の方向性、狭義の銀遣いの端緒

第5章 もう一つの東西結節点はどう特殊か―伊勢の状況
 第1節 伊勢の貨幣をめぐる千枝大志氏の議論と地理的環境
 第2節 千枝氏著書の成果
 第3節 千枝氏著書への疑問―伊勢の地域性に関する問題を中心に

第6章 京都隣接地域の独自性・共時性―摂津の状況
 第1節 摂津の銭・銀・金をめぐるこれまでの議論と地理的環境
 第2節 銭―特殊な階層間価格比
 第3節 銀―価値尺度としての使用
 第4節 金―現物使用の存在
 第5節 銭使用の独自性、金・銀使用の共時性

第7章 生野銀山を挟む南北の対称と非対称―播磨・但馬の状況
 第1節 播磨・但馬の銭・銀・金をめぐるこれまでの議論と地理的環境
 第2節 播磨―銭のプレゼンス低下と金・銀の使用
 第3節 但馬―銀山の存在はその所在地で銀を普及させるか
 第4節 銀使用の非対称、金使用の共時性

第8章 毛利領国における銭の未統合―出雲の状況
 第1節 出雲の銭をめぐるこれまでの議論と地理的環境
 第2節 高位銭―精銭・清銭・吉銭・古銭
 第3節 低位銭―悪銭・南京・鍛・なみ銭・当料
 第4節 基準銭の政策的設定、未統合の実態

第9章 瀬戸内海南岸の銭秩序―伊予・讃岐の状況
 第1節 伊予・讃岐の銭をめぐるこれまでの議論と地理的環境
 第2節 伊予―小早川検地にみる銭の階層性
 第3節 讃岐―上銭の存在
 第4節 四国における銭の階層化と統合の方向性

第10章 江戸幕府に先行する銭生産―九州北部の状況
 第1節 九州北部の銭をめぐるこれまでの議論と地理的環境
 第2節 豊後・筑後―「和銭」「清銭」
 第3節 肥前―佐賀藩の銭製造事業
 第4節 地方政府による銭生産への視野

第11章 国産銭に関する江戸開幕以前の法制
 第1節 16世紀の国産銭を文献史学的に考える
 第2節 「日本」の語を含む銭種
 第3節 「地」の語を含む銭種
 第4節 京銭
 第5節 打平―無文銭
 第6節 今銭・新銭
 第7節 社会の実態レベルにおける普及と政策による追認

第12章 紙幣前史―中世手形類の技術的到達点
 第1節 近世紙幣の系譜をめぐるこれまでの議論
 第2節 前史―紙券の支払手段的使用の経験・発想の端緒
 第3節 割符―「割符=紙幣」説をめぐって
 第4節 預状・替状―近世紙幣への機能的接近
 第5節 山田羽書―近世紙幣の初例
 第6節 中世手形類と初期私札との連続性

第13章 近世貨幣統合の経緯を振り返る
 第1節 近世開幕期に何が起こったか
 第2節 銭について
 第3節 金・銀について
 第4節 紙幣について

終章 三貨制度成立過程の政策史的ロードマップ
 第1節 政策史の視野
 第2節 信長以前―三貨比価公定と銭統合の端緒
 第3節 信長―ビタの基準銭化
 第4節 秀吉―銭の全国統合と金・銀規格化の方向性
 第5節 家康―三貨制度の確立
 第6節 家康以後―江戸幕府外貨幣の淘汰
 第7節 結びにかえて

補章 醍醐寺僧房玄は銭の夢を見る
 第1節 房玄「観応二年日次記」と夢記
 第2節 房玄が見た銭の夢
 第3節 房玄の夢解釈の歴史的特徴―さとりを求める伝統性
 第4節 銭に聖性を認める発想


成稿一覧/あとがき/索引

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