箜篌の研究
定価
6,600 円(税込)
本体 6,000円
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著者・編者略歴

なかやす・まり…1971年静岡県生.早稲田大学文学研究科芸術学(美術史)専攻博士後期課程単位取得満期退学,博士(文学)乙取得.高野山霊宝館学芸員を経て,京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター特別研究員.

内容

 浄土では自然と音楽が湧きおこり、仏の功徳を謳っている――
 寺院においてその音楽を象徴したのが、建築物に飾られた楽器である。長く仏教建築を荘厳しながらも今では廃れてしまった絃楽器「箜篌(くご)」。
 中国・日本の文献を博捜し、その実態を明らかにする。

■担当編集者より■
仏教を愛しすぎて山寺に籠もった先輩がいる――
友人のいたゼミで、ほぼ伝説のように語られていた噂です。
すごい先輩だなあ、と思ってその時は聞いていました。
この流れでお察しの方もいるかもしれません、そのすごい先輩こそ、著者の中安先生です。

大学では座禅サークルに入っておられた等々、とても面白い経歴をもつ先生の研究が、ユニークでないはずがありません。
テーマはタイトルそのまま、ずばり「箜篌(くご)」です。
……ところで「くご」ってなんでしょうか。
私がこの本を担当して最初にした作業は、「くご」から「箜篌」に変換できるよう設定することでした。

私の不勉強はさておき、一般にはほとんど知名度がないと思われる絃楽器「箜篌」ですが、意外にもその姿は最近(?)、江戸時代まで見られていたそうです。

今では実態が分からないことから、発掘現場で出てきても、「箜篌」とは判断されず、別の何かとされてしまうこともあるようです。
遺物のまわりからでてきた長方形の木製品があったら、それは箜篌かもしれません。
お住まいの地域の発掘調査報告書、ぜひ見直してみてください。

「今は失われしもの」を解き明かしていく研究にロマンを感じる方へ、おすすめの一冊です。

目次

序章
 コト形絃楽器とは/風で鳴るコト形絃楽器「ウィンドハープ」/箜篌三種/本書の構成

第一章 浄土の音
 風で動いて鳴るもの/自然に鳴るもの/自然に鳴る箜篌/箜篌の特殊性/美術作品にみる自然に鳴る音楽の表現

第二章 日本の美術作品にみる箜篌
 竪箜篌/鳳首箜篌/金剛箜篌

第三章 臥箜篌
   ―日本の仏教建築を荘厳するコト形絃楽器の源流―
 先行研究/箜篌の発生/箜篌の形態/フレットをもつコトの図像資料/文献史料にみるフレットをもつコト/朝鮮半島の玄琴の起源

第四章 日本における箜篌の漢字表記と雅楽寮での使用
 漢字表記と助数詞による区別の有無/雅楽寮での使用

第五章 仏教建築を荘厳する「箜篌」の資料分析
 文献史料にみる「箜篌」/美術資料にみる「箜篌」/考古資料にみる「箜篌」―鳥羽離宮跡出土コト形木製品―

第六章 中国・日本における「風琴」「風箏」
 中国の詩文にみる「風琴」「風箏」/「風箏」は凧か/唐代の史料にみる「風箏」/日本における「風箏」

第七章 仏教建築を荘厳する宝鐸の存在と音の意義
 「鐸」の字義/インドの宝鐸/中国の宝鐸とその音/自鳴する様々な体鳴楽器の音の意味/浄土の宝鐸/日本の宝鐸と鐘

終章


あとがき
初出一覧
図版一覧
索引

紹介媒体

  • 『東方』428号

    2016年10月

    紹介

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