長谷川利行 小品展 -1冊のスクラップブックより―

ぎゃらりぃ思文閣

2013.08.01(木)2013.08.16(金)

ごあいさつ

長谷川利行の名を聞いて、すぐに作品を思い浮かべられる人は、残念ながらそれほど多くはいらっしゃらないでしょう。
明治24年(1891)京都に生まれた利行は、文学と美術に天賦の才をもち、中学のころから文芸活動を始めます。その後30歳頃上京してからは、画家としての生活に入りますが、当時の画壇において芳しい評価を得ることはできませんでした。やがては日々の衣食住に事欠くようになりながら、大好きな絵を描くことだけはやめず、また酒をこよなく愛します。
美術評論家の小倉忠夫氏は、利行の代表作のひとつ「大島」について「油彩による俳画ないし禅画といった趣がある」と書かれています。即興性や大胆な省略はまさにその通りであるとともに、利行の生き方そのものも、まるで市中の隠者もしくは禅僧のようだったのではないでしょうか。世間的な栄達に汲々とせず、ビスケットの箱や帳簿の裏にまで即興的に、ひたすら、なりふり構わず描きつづけた利行。その最期は昭和15年(1940)、東京の養育院での孤独な病死でしたが、それもまた彼の自由な精神のあり方を物語っているようです。

 

このたび私どもは、利行が生前、自身でスクラップブックに貼ったと思われる作品85点を入手することができました。没後「天才画家」の称をほしいままにし、今も熱狂的なファンをもつ利行作品を、皆様にこれほどまとまった点数ご紹介できますことは、私どもにとりまして大きな喜びです。できるだけ多くの方にお持ちいただきたいと願い、個々に頒布させていただくことに致しました。皆様にはこの機会に、知る人ぞ知る作家の名とともに、作品を永くご記憶いただければ幸いです。

 

ぎゃらりぃ思文閣 田中 大