幕末期の老中と情報
定価
10,450 円(税込)
本体 9,500円
在庫状況: 在庫あり

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幕末期の老中と情報

水野忠精による風聞探索活動を中心に

佐藤隆一 著

  • 体裁
    A5判上製・520頁
  • 刊行年月
    2014年06月
  • ISBN
    978-4-7842-1702-1

2016年度青山学院学術賞受賞

著者・編者略歴

さとう りゅういち…1956年東京都生。青山学院大学大学院文学研究科史学専攻博士課程単位取得済退学。専攻は日本近世史。現在、青山学院高等部教諭。

内容

滅びゆく江戸幕府にあって、その権力中枢にある老中たちは、公的な機関を駆使した周到な情報収集を行うとともに、一方で彼ら自身がその裁量を発揮してつくりあげた個人的な人脈による情報ネットワークにより、臨機応変に正確な情報を入手し、刻々と変わる情勢に応じた政策決定を行っていた。
 本書は、水野忠精を題材とした老中の情報収集を軸に、同時代の他の事例も交えて、幕末期の老中による政治情報収集の実態とその情報内容、さらにはこれらの扱われ方を実証的に分析することで、基本的な老中の情報収集ルートの枠組を明らかにする。
 悪戦苦闘と挫折をくり返しながらも国政を支え続け、結果的には敗者となった水野忠精ら幕閣の政治活動にも、明治新政府樹立への踏み台としての役割を認め、一定の歴史的評価を与える。

目次

序章 言葉としての「情報」と「風聞」「風説」
 一 「情報」という言葉の由来とその用い方
 二 「風聞」「風説」両語の意味と使い分け
 三 混同されやすい「風聞」「風説」

第一章 老中と情報に関わる諸問題
 一 幕末期の老中
 二 幕末期の征夷をめぐる問題
 三 井伊政権による風聞書
 四 水野忠精と風聞書

第二章 島津久光卒兵上京・江戸出府に関わる情報収集
 一 九州・畿内における情報収集
 二 三嶋宿を通じた風聞書
 三 東海道宿場通行の長州藩士
 四 江戸市中の情報収集
 五 島津久光江戸出府をめぐる諸情報

第三章 将軍家茂上洛をめぐる情報収集
 一 将軍家茂上洛の決定と情報収集
 二 将軍上洛準備と京都情報収集
 三 英艦横浜集結と将軍上洛経路の変更
 四 将軍上洛と賀茂社行幸

第四章 攘夷・鎖港問題をめぐる情報収集
 一 将軍家茂帰東問題と石清水社行幸
 二 攘夷をめぐる幕府と長州藩
 三 横浜鎖港交渉と家茂再上洛

第五章 元治の庶政委任と老中の往復書翰
 一 家茂再上洛をめぐる政情と水野家文書『秘翰』
 二 両都両港開市開港問題
 三 天狗党の乱発生
 四 横浜鎖港問題の行き詰まり
 五 天狗党の乱の展開と幕閣

第六章 禁門の変に関わる情報収集
 一 禁門の変発生
 二 禁門の変をめぐる水野忠精の情報収集(その一)
 二 禁門の変をめぐる水野忠精の情報収集(その二)

第七章 長州藩・天狗党・外交問題に直面する幕閣と情報
 一 塩谷甲蔵・中村敬輔両名意見書にみえる長州征討論
 二 第一次長州征討の開始
 三 天狗党の乱終息と佐原騒動をめぐる状況
 四 江戸幕閣と外交問題

第八章 水野忠精老中罷免をめぐる諸問題
 一 江戸協約に関する外交折衝
 二 水野忠精老中罷免をめぐる状況
 三 老中罷免後の水野忠精

第九章 彦根・土浦両藩とオランダ風説書
 一 彦根藩文書オランダ風説書の書誌的考察
 二 土浦藩文書オランダ風説書の書誌的考察
 三 彦根・土浦両藩文書オランダ風説書をめぐる諸問題

終章―まとめにかえて―
「風聞」「風説」の性格
老中の情報活動
幕末政治と老中


参考文献
あとがき
索引

紹介媒体

  • 『ヒストリア』248号

    2015年2月

    鴨頭俊宏

    紹介

  • 『洋学史研究』32号

    2015年4月

    松本英治

    書評

  • 『日本歴史』807号

    2015年8月1日

    荒木裕行

    書評と紹介

  • 『明治維新史研究』14号

    2017年2月

    新刊紹介

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