著者・編者略歴

早稲田大学非常勤講師。上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科修士課程、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。「MOA美術館蔵「清水寺遊楽図屏風」に関する一考察」(『MUSEUM』680号、2019年)で國華奨励賞受賞(2020年)。

内容

お国によって始められたかぶきは、その後、遊女たちによって模倣され、十七世紀初頭の京都を中心に地方に拡がった。近世の幕開けとともに絵画史に新しい画題やモチーフを提供することとなったお国や遊女によるかぶき―すなわち、女かぶき―は、どのような意味や役割を担って描かれたのか。同時代の鑑賞者はそれをどのように捉えたのか。
まず、女かぶきの演目とその変遷の経緯を整理し、描かれた芸態の意味を読み解く。次に、女かぶきを取り上げる絵画の真の主題と制作意図や背景、絵師や注文主と鑑賞者を探り、さらに、次世代の婦女遊楽図とのつながりを示す。その上で、遊楽図再考に向けて試論を提示する。

目次



第一部 お国かぶきと遊女かぶき

第一章 お国かぶき―カブキモノから「かぶき者」へ
 一.かぶきの始まり
 二.お国かぶきの芸態

第二章 遊女かぶき―模倣から創造へ
 一.お国をまねて
 二.遊女かぶきの芸態
 三.お国を超えて

年表 「女かぶき関連記録」


第二部 女かぶき図屏風の諸相─真の主題と機能

第一章 追慕・追善─『阿国歌舞伎図屏風』(京都国立博物館)
 はじめに
 一.小屋内外の人々と風俗
 二.桟敷の人々
 三.描かれた場所
 四.絵師について
 おわりに

第二章 記念/祈念・祝儀─『清水寺遊楽図屏風』(MOA美術館)
 はじめに
 一.モチーフの検討
 二.遊女かぶきの興行場所の再検討
 三.本図特有のモチーフと遊女かぶき踊歌
 四.西洞院道喜と本図の制作背景
 五.注文主と絵師
 おわりに

第三章 敬慕・追憶―『阿国歌舞伎図屏風』(出光美術館)
 はじめに
 一.右隻に描かれた場所とモチーフの提示方法の特徴
 二.左隻に描かれた場所とモチーフの提示方法の特徴
 三.描法の特質と絵師
 四.両隻の人物比定
 五.制作背景の推定
 おわりに


第三部 女かぶきの記憶とその痕跡

第一章 懐古─『機織図屏風』(MOA美術館)
 はじめに
 一.モチーフの分析
 二.画中歌の分析
 三.女かぶき踊歌と「鹿子結」のモチーフ
 四.女かぶき踊歌と「機織り」のモチーフ
 五.「糸繰り」のモチーフと女かぶきの所作
 六.制作年代と絵師
 おわりに

第二章 憧憬―『桜下弾弦図屏風』(出光美術館)
 はじめに
 一.上村松園が見た二つの『美人観桜図』
 二.『機織図』との関係
 三.出光本と「又兵衛風」人物の図様
 四.画中歌と画中文
 おわりに

結びにかえて―「遊楽図」再考に向けて

初出一覧/あとがき/挿図一覧/索引

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