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著者・編者略歴

(おおいし・かずお)・・・1966年静岡県生まれ.京都大学大学院文学研究科博士課程歴史文化学専攻日本史学専修学修認定退学.京都学園大学非常勤講師.

内容

 1888年(明治21)黒田清隆内閣の大隈重信外相による条約改正交渉から、1894年伊藤博文内閣の陸奥宗光外相による日英通商航海条約締結までの時期について、以下の三つの視角─日本側の交渉戦略・交渉戦術、交渉相手の欧米列国の動向、日本国内における諸個人・諸集団の協力・対抗・競合の側面─から分析する。
 最終的に、「条約改正に代表される近代化」と「日清戦争にはじまる対外膨脹」という2つの外交課題の関係、すなわち「対外戦争なしでの近代化は可能であったのか」について新たな見通しを提示する。

目次

序論
 明治中期条約改正問題の位置 ─陸奥条約と日清戦争─
 時期区分と先行研究
 本書の視角
 本書の構成

第1章 大隅交渉の出発 ─あらたな戦略の登場─
 第1節 交渉再開への端緒
   条約改正会議中止後の混迷
   ドイツ公使の提案 ─「裏口」からの関税回復策
   イギリス公使ガビンズ書記官の情勢分析 ─八方ふさが   りの日本
 第2節 大隈入閣 ─新戦略への抱負
   入閣の理由をめぐる通説
   大隈に自信を与えたハウス
 第3節 大隈案の形成 ─大隈・井上馨・伊藤の協力
   井上私案
   アメリカ公使ハッバート私案から大隈案へ
 第4節 新戦略とその発動
   「強硬政略」の構図 ─最恵国問題と条約廃棄戦術
   新聞記者ノーマンを通じた前哨戦
 おわりに ─ひきつがれた改正案、あらたな交渉戦略

第2章 大隈交渉における「列国協調」と廃棄戦術
 第1節 「列国協調」の弱体化と潜行
   ドイツ公使の対日協力
   イタリア公使の活躍 ─「列国協調」守護神の登場
   イタリア政府の対英行動
   イタリアの動きの背景
   追いつめられたイギリス
 第2節 条約廃棄戦術をめぐる暗闘
   条約廃棄戦術の浮上 ─八月二日閣議
   政府内改正反対派による批判
   ロエスラーの賛成意見
   デニソンの賛成意見
   大隈遭難へ ─列国代表団と居留民社会

第3章 大隈交渉における帰化法の意味 ─「国内」阻止要因としての井上毅─
 第1節 帰化法問題の提起と展開
   「法典論争」の発生から条約問題へ
   帰化法案の浮上
   帰化法案提起の背景
   「内閣原案」の形成
   大隈・外務省の対応
   「ロエスラー意見書」と「ロエスラー逐条修正」 ─「内閣修正案」の形成
 第2節 帰化法早期公布路線の挫折
   メディア統制をめぐる攻防
   枢密院委員会による厳格化の完成
   早期公布路線の挫折
   帰化法案の暴露とイギリスの対応

第4章 青木外相期の条約改正問題 ─日本のディレンマ、イギリスの決断─
 第1節 大隈交渉収拾への方針形成 ─均衡の成立
   調印済み条約に対する批准拒絶策動
   修正要求提起方針の浮上
   井上馨の帰京
   「将来外交の政略」の成立
   「青木覚書」をめぐる葛藤
 第2節 イギリスの決断と日本のディレンマ
   イギリスの方針転換
   英政府対案
   日本側対案の作成と「異議百出」
   青木交渉の終息 ─封じ込めの完成
 おわりに ─孤立する日本

第5章 陸奥交渉への道 ─再編される条約案─
 第1節 青木周蔵の「平和的廃棄の手段」 ─「陸奥条約」の原形
   「条約改正記事」の成立 ─対等条約案への飛躍
   青木構想の由来
   青木構想の廟議化をめざして
   ロエスラーへの諮問
   井上馨名義の意見書
 第2節 榎本武揚外相の「条約改正に関する断案」から陸奥案へ
   「断案」の構成 ─併記された青木構想
   「断案」と陸奥農商務相
   条約改正案調査委員会 ─封印された「断案」
   陸奥案の成立 ─くみこまれた廃棄戦術
   陸奥案とは何だったか

第6章 ポルトガル領事裁判権廃棄事件 ─国際環境の隠れた構造─
 第1節 事件のあらまし
   事件の発端と榎本外相
   陸奥新外相の対応 ─新条約締結をめざして
   栗野政務局長のヨーロッパ派遣から交渉決裂へ
 第2節 隠れた国際的背景
   対日干渉政策の起点 ─「覚書断片」
   イタリアによる「リスボンでの影響力」
   マカオからグラヴァーへの非公式ルート
   「陸奥交渉」へ

第7章 陸奥交渉
 第1節 交渉開始への情勢判断
   交渉開始時の交渉戦略
   国際環境 ─明らかになった日本の孤立
   予備折衝から対英単独交渉の強行へ
 第2節 交渉戦略からみた対外硬派問題
   「非内地雑居派」の系譜 ─改正反対派の再結集と井上毅
   民間における条約廃棄論者の系譜 ─『回天』対井上毅
   「条約励行建議案」の両義性
   第五議会解散 ─対外硬派との決別
   イギリス外務省の分析 ─時間はだれに味方するか
 第3節 日本側交渉戦略の迷走
   条約廃棄論の表面化
   対ロシア・アメリカ交渉の展望をめぐって
   イギリスの逆襲 ─条約廃棄論の撤回から日英条約の締結へ
   「陸奥条約」のその後

結論

 
 あとがき
 人名索引

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