蝉時雨

「風ふく枝のなんとせかせか蝉のなく」
流浪の俳人、種田山頭火の句です。
新山口の山頭火
新山口の山頭火
ここ数年蝉の声が無性に気になるようになってきました。
博多某所の蝉の声
博多某所の蝉の声
この時期京都を起点にして西へ東へ移動していると、あちこちから聞こえてくる蝉の大合唱が
喧しいのは夏なので当たり前のことですが、東の例えば北陸や信州さらには東北で聞く蝉と、
西の四国や九州で聞く蝉の声とでは違うということに気づきました。
瀬戸内某所の蝉の声
瀬戸内某所の蝉の声
同じ九州でも博多駅や天神の繁華街で聞く蝉と、山間部の蝉では、どうも違うようです。
時期や地域さらには時間帯が変われば蝉の種類の生息分布図も異なるなど至極当然の話では
ありますが、それに38年間も気づかずに生きてきました。
日本海の蝉の声
日本海の蝉の声
…と言っても日本の蝉のほとんどの種類が広く北海道から沖縄まで隈なく分布しているので、
当然どこに行っても種類が混在していますが、「♪ミンミンミン」が多いのか「♪ジジジジジジ」が
多いのか、はたまた「♪シャーシャーシャー」なのか「♪ツクツクボーシ」なのか…
要は地方地方で蝉の世界にも派閥の勢力図があるということだそうです。
子供の頃、四国の田舎者だったので虫取り全般は好きでしたが、カメムシ目の蝉だけはどうしても
外見上の問題や、おしっこをひっかけられることに対して子供ながらにプライドの理由で好きにはなれず、蝉の声に耳を傾ける気がさらさらありませんでした。
熊本城の蝉の声
熊本城の蝉の声
しかし近年蝉の声にも地方色があると気づいてからはだんだん興味が湧いてきて、松尾芭蕉が
「岩に染み入る」と詠んだ世界観というか背景も何となく…理解できるような気がしています。
大正時代には芭蕉が奥州の道中で耳にした山形立石寺(山寺)のその蝉の種類がヒグラシなのか、
ニイニイゼミなのかで、山形生まれの斎藤茂吉が論壇でむきになってバトルを繰り広げていたそうですが、斎藤茂吉を大人げなくさせてしまうくらい、蝉の声はどうも一筋縄ではいかないようで…。
ウルトラマンと蝉の声
ウルトラマンと蝉の声
…かと思えば芭蕉とほぼ同時代を生きた井原西鶴はこんな句を遺しています。
「蝉聞きて夫婦いさかひ恥づるかな」
そんなこんなで私事ながら身を固めました。
「蝉の声を心静かに聞けるような、そんな侘・寂がわかる家庭を築きたい」
…そんな戯言を妻には言えず一人悶々とする今年の夏です。ジジジジジ。
(入江)