かなしくて何か問題でも?

個人的な話ですが、程ほどに疲れがたまると、
つい一人でお酒を飲みながら「かなしい」映画を観てしまうという大変暗い趣味があります。
貴重な休日をそんなふうに過ごしてしてしまう自分に罪悪感もありますが、
先日またやってしまいました。今回は黒木和雄監督の戦争レクイエム四部作
(三部作と言われていますが、私は遺作も入れて四と数えます)のうちから二作。
飽きずに見直すこと三回目です。

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黒木監督の撮った映画は戦争が主題であるにも関わらず壮絶な戦闘シーンがなく、
淡々とした会話が続いていく非常に静かなものです。
登場する人々は「失ったもの、これから失うであろうもの」をおもってかなしみます。
死を決意して戦地に行く男を送り出す悦子(『紙屋悦子の青春』)、
原爆で亡くなった人々を忘れられず結婚に踏み切ることができない美津江(『父と暮らせば』)。
彼女達が心の底からかなしんで泣く姿を見ているとなぜか癒されるような気持ちがして、
「私は(あなたを失って)さみしい」「(あなたを救う力がなくて)かなしい」と涙を流すことは
厭うべきことではなく、とても大切なことなのではないかと思えてきます。
忘れてしまえば楽なものを、いつまでも抱えて生きていく。
その「かなしみの去ることを欲しない」姿は、とてもやさしいようにも見えます。

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しかし彼女達もいつまでも泣いていたわけではありません。
前掲の『父と暮らせば』の美津江は、
父の「このかなしみを長く忘れずにいるために、生きて私の孫を残して欲しい」という言葉によって
笑顔を取り戻し、結婚から逃げることをやめます。
彼女の足を引っ張っていたはずの「かなしみ」は、永遠に引き受けようと決意した瞬間に、
その後何十年も生きて家族をつくっていく前向きな力に転化したのです。
そういえば『万葉集』にも以下の有名な「かなしい」歌があります。
「世の中は空しきものと知る時し いよいよますますかなしかりけり」大伴旅人(巻五)
「妹が見し屋前に花咲き時は経ぬ わが泣く涙いまだ干なくに」   大伴家持(巻三)
奈良時代であろうが戦時中であろうが、もちろん現代においても、
どうあがいても人の命は有限で、人の能力も有限で、だからどうしたって人生は「かなしい」。
それで何の問題もないのかもしれません。
というわけで次は山本薩夫監督の『戦争と人間』三部作でも観ようかと思います(三回目)。
(山田)