生誕250年 酒井抱一

みなさん、琳派といえば、だれの名前を思い起こすでしょうか。
俵屋宗達尾形光琳本阿弥光悦、あるいは尾形乾山…。
琳派の歴史で重要な画家が、来年生誕250年を迎えます。
彼の名前は、酒井抱一
抱一は、譜代の大大名、姫路藩の次男として生まれました。
兄が家を継いだことから文化人として暮らし、
谷文晁亀田鵬斎といった当時の一流の文化人と親しく交流を重ねました。
ちなみに彼らは「下谷の三幅対」とよばれ、当時より時代を代表する粋人たちとして有名でした。
三人が居住し、現在でも江戸風情がそこかしこに残る「谷根千」(谷中・根津・千駄木の通称)を歩くと、
まだ彼らの息づかいが感じられるような気すらします。


琳派は、時間・場所・身分を超え「私淑」というかたちで受け継がれるという特徴があります。
光琳は宗達から直接指導を受けたわけではありませんし、
光琳を継承しようとした抱一もまた、光琳から手ほどきを受けたわけでもありません。
しかし、彼らはひとつの作品でつながっています。
その作品は、俵屋宗達の「風神雷神図屏風」です。
fujin-raijin-sotatsu.jpg
宗達が描いた屏風を光琳が模写し、
fujin-raijin-korin.jpg
さらに光琳の屏風の裏に、
抱一が返歌として「風雨草花図(夏秋草図屏風)」を描きました。
hoitsu.jpg
作品保護の観点から、光琳の「風神雷神」と抱一の作品は、現在別々に表装されていますが、
烈しい風に揺り動かされる秋草と、雨に濡れる夏草と描いた抱一の絵は、
見事に「風神雷神」への敬慕を昇華させたものと言えるでしょう。
酒井抱一の絵をひとことで言うと、「粋」ではないかと思います。
俵屋宗達や尾形光琳のふくよかさを受け継ぎつつ、江戸という街の空気をいっぱいに吸い込んだ、
シャープで洒脱、それでいて叙情的な雰囲気が、抱一の作品の魅力です。
生誕250年に先がけ、この12月、平凡社から『別冊太陽 酒井抱一』が刊行されました。
現在細見美術館では「お江戸の琳派と狩野派」と題し、
酒井抱一をはじめとする江戸琳派の作品と江戸狩野派が展示されています。
さらに来年は、出光美術館で「琳派芸術 ―光悦・宗達から江戸琳派―」が1月8日から3月21日まで、
畠山記念館で「生誕250年 酒井抱一 ―琳派の華―」が1月22日から3月21日まで開催されます。
この機会に、ぜひ酒井抱一の魅力をご堪能ください。
(岸本)