あの世の情景-六道絵

もうすぐお盆の時期がやってきます。
okuribi.jpg
京都の「五山の送り火」は有名ですが、「送り」のまえには、「迎え」の行事があります。
京都ではご先祖様の霊を「おしょらいさん」と呼んで、
迎え鐘をついて現世へお迎えする六道参りが行われます。
死後、極楽往生できなかった者が行く六道(地獄道・餓鬼道・畜生道・阿修羅道・人道・天道)にいる
ご先祖様の霊を現世にお迎えし供養する行事で、
六道珍皇寺大報恩寺(千本釈迦堂)などで毎年8月7日から10日の時期に行われます。
今回は、この六道の情景を描いた六道絵について少しお話しします。


平安時代の天台僧・源信の著した『往生要集』に説かれた
六道の苦しみと恐怖に満ちた情景は、鎌倉時代に「六道絵」として描かれるようになります。
有名なものでは、滋賀・聖衆来迎寺蔵の国宝・六道絵などがあります。
では、六道絵の世界をのぞいてみましょう。
* * *
まず地獄の情景。
炎に焼かれ、のこぎりで体を切り刻まれ…
いわゆる私たちが抱いている「地獄」のイメージに近いものです。
印象的な場面は、閻魔王の前で裁かれる女性。
彼女の足下には一人の赤子が母親の着物の裾をつかんでいます。
一見、母親に甘える子供の姿に見えますが、その手には書状が握られています。
実際は、自分の母親の犯した子殺しの罪を、訴状を手に閻魔王に訴えている姿を描いたもの。
赤子の表情が無垢なだけに一層ぞくりとします。
餓鬼道は、生前窃盗したり酒を水で薄めて売ったりした者たちが、
餓えと渇きに苦しまねばならない餓鬼として生まれ苦しむ姿が描かれます。
また、人道では生老病死の苦しみを、
畜生道では弱肉強食の恐怖に怯え、常に労役を強いられる苦しみを、
阿修羅道では、終わることのない戦争に明け暮れる阿修羅王と帝釈天の軍隊や、
戦いで愛する者を失う悲しみに暮れる女性達の姿などが描かれます。
六道の最上層に位置する天道に住まう天人でさえ、
老いた者の天衣は垢で汚れ、わきに汗をかき、若い天人からは加齢臭がきついとさげすまれる…
六道という穢土から解脱しない限り、老衰の苦しみからは免れることはできません。
このように六道絵は、極楽(来迎図)の対極にある地獄をビジュアル化することで、
極楽往生へと人々を導き、救済をはかろうとしたのです。
* * *
これからのお盆の時期に合わせて、多くの寺院で一般参拝客への六道絵の公開が行われます。
この世とあの世との距離が、いつもよりすこしだけ近づくように感じられる特別な季節。
「あの世」の様子ものぞいてみてはいかがでしょうか。
(千田)