侍と私

西洋では、肖像画は一部の階級にのみ認められた、一種の特権でした。
日本においても、肖像画が描かれるのは、身分の高い人間か偉人に限られていました。
そもそも肖像画家に依頼することは、庶民の懐では無理な相談だったのです。
しかし、あるものの発明が、肖像のあり方を劇的に変えました。
身分の高くない人間でも、気軽に、そして手軽に、
ポートレイトを作成できるようになったのです。
その発明とは、写真。
写真は、「肖像の民主化」を達成しました。
現在、東京都写真美術館で開催されている侍と私」展は、
日本や西洋における初期写真の功績をまとめた、意義深い展覧会です。
2010_006_a.jpg


展覧会のタイトルの通り、この展覧会には
侍の肖像写真が多く展示されています。
しかし、侍とはいっても、彼らは決して身分の高い者ばかりではありません。
本来ならば肖像画を作ることが出来なかった彼らにも、
それを可能にしたのが、幕末に入ってきた写真技術でした。
ただ、写真とはいってもまだまだ当時は高価だったようで、
武士以外の身分の方の写真は、あまり残っていません。
明治時代になると、浮世絵の代わりに写真が使われるようになり、
歌舞伎俳優や芸妓などのブロマイドなども写真で代用されるようになりました。
また、写真技術が発達して安価になったり、
日本の文化をヨーロッパに伝える気運が高まると、
社会の風俗なども写されるようになり、
道行く商売人の姿も、カメラにとらえられるようになりました。
当時の写真技術はまだまだ未発達で、撮影しているときに
動くことが出来なかったためか、逆にそれが、この時代の写真に
凛とした品格を与えているような気がします。
「侍と私」は7月25日まで開催しています。
(岸本)