「舟越桂 私の中のスフィンクス」展をみて

こんにちは、今年度4月に入社しました、糸永と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私事ではありますが、先日、「舟越桂 私の中のスフィンクス」展を観に、
兵庫県立美術館へ足を運びました。
舟越桂(1951年盛岡市生)は今日の日本を代表する具象彫刻家で、
その作品は国内外問わず多くの美術館に展示されています。
また、作品の写真が小説家・天童荒太氏の著作の表紙にしばしば用いられていることから、
ご存知の方も多いかと思います。
かくいう私も舟越桂の作品を知ったのは、高校生の頃手に取った
『悼む人』(天童荒太著、文春文庫、2008年)がきっかけでした。
さて、同展会場に足を踏み入れると、一室の中央にそっと配置された「月の降る森」が
出迎えます。壁・天井・床すべてが白色で彩られた明るい部屋の中で、全身に青白く
影をまとった女性の神秘性が際立っていました。白く美しい胸元は、そこに当たる
目に見えない光の存在をも感じさせます。
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「月の降る森」2012年、メナード美術館
 その後、展示は「1章 1980~1990年代初め」「2章 1990年代初め~2000年代初め」
「3章 2000年代初め~現在」と続き、年代ごとに作風の変遷をたどることができます。
なかでも印象に残ったのは、第1章の初期作品群でした。楠を材とした胸像と大理石の
玉眼というスタイルが確立したこの時期、作家は性別をはじめ、表情、髪型、服装など
多様な人物像を制作しました。わずかに外向きに入れられた瞳の表現によって、
観者はいくら見つめても人物たちと目が合うことはなく、それゆえ作品にはどこか瞑想的、
内省的な雰囲気が漂います。こうした表現は、一見多彩な個性を有するこれら作品群に、
ある種普遍的な精神性を共通して与えているように感じられました。
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「冬の本」1988年、作家蔵
2章以降は、胴体を山に見立てた人間や半人半獣のスフィンクスなど、「異形」の作品が目立ちます。
自然と人間、人間と獣といった二面性を持つ作品群は、詩的なタイトルと相まって、
観者に豊かな想像を促します。
このように今回、初めて舟越桂の作品を実見する機会を得ましたが、鑑賞を通じて、
自分自身とも普段よりゆっくりと向き合えたようで、とても心地よい時間を過ごすことができました。
(糸永)