あの人が愛した食べ物

思文閣の社主(以下、社内の通称に従って「会長」)田中周二が鬼籍の人となった。
商売に関して極めてストイックな人で、かつ昔気質の頑固爺だったというのが、
生前の故人を知る方々に共通する人物像であったに違いない。
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そんな仕事一筋の会長に入社早々の私が初めて怒鳴られた一言は
「俺(会長の一人称は普段「僕」であるが、怒りの沸点に達した時は「俺」になる)
が降りんでエエゆうてんのに、なんでお前は降りるんやっ!」だった。
何のことはない、当時から会長が退社して自宅へ送るのは新人営業の仕事であったが、
道すがら行きつけの八百屋さん(東大路通沿いにあったが今はもうない)で
「お芋さん」をしょっちゅう買っていた。
その時会長は車から降りることなく、会長がパワーウィンドウを下げれば、
すかさずおばちゃんが袋に詰めた「お芋さん」を届けてくれたのである。
結局、常連客の特権を享受していた会長にとって私の独断はその楽しみを奪うものであった。
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戦後の食糧難を生きてきた会長世代にとっては、恐らく芋は嫌というほど食べたはずであり、
実際その世代の特に男性で「芋が嫌い」という方は比較的多いが会長は例外であった。
その一件以来、私が会長に許していただくまでは相当の時間を要し、
会長からそのお芋さんのおすそ分けを頂いたことは全くと言っていいくらいなかった。
…そんなことを告別式の時思い出していた。
出棺の際、棺を運ばせてもらったが、非常に不謹慎ながらも
「棺にサツマイモを入れてあげたら喜ばはるやろなぁ」と思っていた。
告別式から帰ってきて、
会長が入院される直前に思文閣本社社屋のはす向かいにオープンしたばかりの
コンビニの前を通りかかった時、「焼き芋」の幟が眼に入った。
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今でも会長がそのコンビニの店員を困惑させながら「お芋さん」を買っているような、
そんな気がして私はちょっと泣いた。
…それがこの秋の出来事だ。
(入江)

屏風の船出

海外からメールが届いた。
以前お納めした屏風をどのような形で展示されているか、教えていただいたのである。
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添付画像を拝見してみるとそこは、ゆったりとした空間のゲストルームといった風情の瀟洒な室内。
その壁面にフラットに展示された時代屏風。
新調された調度品に、近世日本の空気を今に伝えるBIOMBOが調和した「和空間」。
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言われてみないとわからないが実はここは巨大船舶の一室なのである。
この写真は最近執り行われた進水式の様子。
近世初頭より屏風は海を渡り西洋世界にも紹介されてきたが、これらの屏風は今から七つの海を巡る旅に出る。
(入江)

神仏います近江 信楽編

近江は仏教美術、神道美術の宝庫。
いま話題の、「神仏います近江」という展覧会へ行ってきました。
近江
「神仏います近江」は、滋賀県のMIHO MUSEUM滋賀県立近代美術館大津市歴史博物館
三館が合同で開催している企画展です。
滋賀県といえば真っ先に思い浮かぶのは琵琶湖!ですが、
実は国宝に指定されている文化財の件数は
東京、京都、奈良、大阪に次いで多い県なのです。
地元の方にも意外に知られていない事実だそうで…
必ずしも国宝が多いからいい、とは言えないとは思いますが、
貴重な文化財がたくさんあることはもっと知られていいのではないでしょうか。
そんな滋賀県の誇る三館合同の展覧会、図録は思文閣出版が制作いたしました。
およそ300点というボリュームで、なんと2400円。
宣伝になってしまいますが、ぜひお求めいただければと思います。
さて、信楽会場のMIHO MUSEUMでは、近江伝来の仏像、仏画、経典などを展観し
我が国の仏教界に多大な影響をもたらした最澄・円仁・円珍らによる
天台仏教の確立までの足跡をたどっています。
どれもこれも貴重な仏像なのですが、
ガラスケースに入っていないどころか、手を伸ばせば届くようなところに展示されています。
仏さまが身近に感じられ、自然と手を合わせてしまうような雰囲気の会場でした。
MIHO MUSEUMの常設展も合わせて拝見しましたが、
世界各地の貴重なコレクションはやはり圧巻です。
インドや中国の仏像は、やはりお顔立ちが日本のものとは異なっていて
風土や気候に合わせて変化してゆく信仰のかたちが見てとれます。
信楽の山深く、神秘的なたたずまいのMIHO MUSEUM。
現在の企画展は12月11日(日)まで開催中です。
会期が終わる頃には、雪景色が美しくなっていることでしょう。
(松本)

瀬戸内にて

10月10日、のっぴきならぬ事情で駆け込んだ倉敷市にある児島市民交流センター
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要はtoiletを拝借しただけなのだが、
そこにある危機を回避して改めて館内を見渡してみると「斎藤真一展」の案内板。
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何でも今月開館したばかりの記念事業の一環で、なんと無料で市民に開放しているらしい。
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20点程の展示ながら昭和24年日展出品作品から絶筆、瞽女シリーズまで網羅。
倉敷市の粋な計らいは今月30日まで。
その後、瀬戸大橋を渡り一路徳島県立文学書道館へ。
香川在住の書家島田三光先生(日展・読売書法会)にお招きいただき
河東碧梧桐 書と俳句」展を拝見。
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碧梧桐の書風の変遷は四期に分類されるが、展示空間を効率的に活かした展示は
書と俳句の両面からアプローチされており、その人物像を俯瞰する事ができる。
島田先生には昨年思文閣出版から『革新の書人 河東碧梧桐』を上梓していただいたが、
私が先生とお話させて頂いたのはかれこれ10年ほど前。
思えば最初は私のミスで先生の逆鱗に触れたのが契機であった。
普段はきわめて温厚なお人柄の先生は会期中の日曜には会場にいらっしゃるそうだ。来月20日まで。
(入江)

木田安彦の世界 レセプション風景

10月5日(火)から開催しております「木田安彦の世界」展。
今回は5日に行われましたレセプションのようすをレポートします。
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予報通り、あいにくの雨。
お足元の悪いなか、たくさんのお客さまにご来場いただきました。
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会場その1、ぎゃらりぃ思文閣です。
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会場その2。思文閣の本社です。この混雑ぶり…狭い会場で申し訳ありませんでした。
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木田先生と社長の田中です。
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田中が熱心に先生の作品を解説中。
レセプションは盛況のうちに終了いたしました。
ご来場いただいたみなさま、誠にありがとうございました。
木田安彦の世界、今月23日(日)まで開催中です。お見逃しなく!