やまとぢから

年末、奈良県立美術館で開催されていた「やまとぢから」展を観て来ました。
皆さまご存じ、平城遷都1300年祭公式マスコットキャラクタ―として一躍有名になった
「せんとくん」の生みの親、籔内佐斗司さんの展覧会です。
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入ってすぐ目に飛び込んできたのは、様々な表情の「童子」たち。
因幡の白兎や桃太郎など、神話や昔話をモチーフにしたものから、不動明王や菩薩像、
はては昆虫に擬したものまで、その独創的な表現力に目を奪われます。
壁に掛けられた雲をよじ登るものや、部屋の一角を駆け回るものなど、空間を巧みに使って
表現されており、それらすべてが活き活きと今にも動き出しそうでした。
籔内さんは仮面舞踏団「平成伎楽団」のプロデューサーでもあり、その伎楽団で使われた作品も
展示されていました。
ここは撮影可だったのでここぞとばかりに。
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色々なキャラクターのなかにはせんとくんもいます。
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さらに進むと、それまでとは全く趣の異なる、男女の像が。
頭部のない引き締まった胴体にまるで本物のような両眼が備わっており、
美しく異様な作品群にしばしくぎ付けとなりました。
これら一連の不思議な世界観はどこからくるのだろうかと気になっていたら、
どうやら籔内さんはもともと仏像など仏教美術の修復をご専門とされていたようで、
なるほど確かに、どの像も凛とした立ち姿に波打つ衣紋、仏像の美しさに共通するものがあります。
厳かな仏教美術を源流とし、数多く生み出された個性豊かな作品たち。
生命力にあふれ、愛嬌ある表情は一度見たら忘れられない、強烈な印象を与えます。
籔内佐斗司ワールドの魅力がいっぱいに詰まった「やまとぢから」展、奈良県立美術館での会期は
終了してしまいましたが、現在横浜のそごう美術館でも開催されているようなので、
ご興味のある方は足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
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(真壁)

大和文華館の水墨画

こんにちは、新入社員の佐藤と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
さて、先日、奈良の大和文華館で開催中の「水墨画名品展」に行って参りました。
道すがら激しい雨に見舞われましたが、幸いにも着く頃には雨も上がって暑さも和らぎ、
良い散策日和でした。
チケットを購入して赤松の古木の木立を抜けると、小高い丘の上に吉田五十八氏設計の
本館が姿を見せます。
池に面したこの本館からはすばらしい眺望も楽しめ、美術鑑賞に疲れたときには、敷地内の
自然と合わせて気持ちをリフレッシュさせてくれます。
大和文華館
今回の「水墨画名品展」では、時代や地域によって様々な表情を見せる水墨表現の広がりを
示すという趣旨のもと、李迪の「雪中帰牧図」(右幅)や可翁の「竹雀図」をはじめとする
大和文華館所蔵の名品に加え、狩野正信の「周茂叔愛蓮図」や、「白衣観音図」といった九州
国立博物館所蔵の品も特別出陳されています。
大規模な展観ではありませんが、中国、朝鮮そして日本の様々な時代の水墨画の名品をいろ
いろと見較べながら、描かれた当時の時代背景などにゆっくりと思いをめぐらせることがで
きました。
とりわけ、李迪の「雪中帰牧図」(右幅)からは、小さな画面ながらすばらしい気品が感じ
られ、中国南宋時代の院体画の傑作を、今こうして日本で目にする事ができるという幸せな
気持ちで見いってしまいました。
会期は10月6日(日)までだそうです。
穏やかな自然の中でゆっくりと水墨画の名品に触れる時間はいかがでしょうか。
(佐藤)

谷文晁展-記録としての絵画

先日、サントリー美術館で開催されている「生誕250周年 谷文晁展」に行って参りました。
展示構成は、「この絵師、何者!?」というキャッチコピーの通り、彼の様々な画風や交友関係を
紹介し、谷文晁の実像にせまろうとするもの。
谷文晁展
中でも松平定信の御用絵師としての活躍が大きく取り上げられていたように思います。
定信に同行し各地を巡った際の写生や、定信の命を受け全国に伝わる古文化財を調査した際の
模写と記録等が特に印象的でした。
私たちも調査の際に写真を撮り記録しますが、カメラの普及していなかった当時は模写でそれ
と同じことをしていたのでしょう。
美術品を扱う立場にいる者として、先人たちとの繋がりのようなものを感じられました。
同時に、テクノロジーが発達した今ではほとんどなくなってしまった、模写による記録伝達に
レトロな魅力を感じ不思議な昂揚感を味わいました。
私はこのような当時の人の生活を感じられるものにどうにも惹かれてしまいます。
探幽縮図改
探幽縮図(和の美476号所載)
余談ですが、今月の弊社目録「和の美」476号で紹介しております作品「探幽縮図」 も、
狩野探幽が鑑定の際に模写をしたもの。
この訪館の直前まで目録の編集作業をしていたため、感じ入るものが多い展覧会でした。
「生誕250周年 谷文晁」展
2013年7月3日(水)~8月25日(日)
サントリー美術館(http://www.suntory.co.jp/sma/
(鈴鹿)

京都ゆかりの、鈴木治と長谷川利行

日ごとに暑さが増す夏、いかがお過ごしでしょうか。
私個人といたしましては、就職を機に京都へ越してきて2度目の夏、
湿気を伴う京都独特の暑さに、未だ慣れずにいます。
先週末、久々に学生時代の友人と、
京都国立近代美術館にて開催中の下記展覧会へ足を運びました。
『泥象 鈴木治の世界 ―「使う陶」から「観る陶」、そして「詠む陶」へ』
(京都国立近代美術館:http://www.momak.go.jp)
鈴木治は、戦後を代表する陶芸家として、
また、「走泥社」設立の中心メンバーとしてよく知られます。
「走泥社」は、昭和23年(1948)、八木一夫・鈴木治・山田光らによって、
新しい陶芸の創造を目的として創立されました。
土そのものが持つ造形の可能性を模索し、
陶芸の既存概念を覆すような走泥社同人作家による前衛陶芸は、
その後の陶芸のあり方に大きな影響を与えたといえます。
今回の展覧会ですが、シンプルな展示室を背景に、
作品の造形や陶肌の色彩が際立ち、その美しさに見入ってしまいました。
展示されている作品には解説文が一切なく、
作品と対峙し、頭の中にうかぶ想像をふくらませながら、
作品そのものを味わうことができたように思います。
今回、近代美術館にも展示されておりました「掌上泥象」シリーズの作品ほか、
鈴木治・走泥社同人作家の作品は、弊社ぎゃらりぃにおいても取扱いがございます。
ご興味のある作品などございましたら、ぜひお問い合わせくださいませ。
鈴木治 装飾的な雲
鈴木治 装飾的な雲
鈴木治 辰
鈴木治 辰
また、ぎゃらりぃ思文閣では8月1日より長谷川利行展を開催しております。
『長谷川利行 小品展 -1冊のスクラップブックより―』
会期:8月1日(木)~11日(日)
(URL:http://www.shibunkaku.co.jp/gallery/)
皆様のご来廊を心よりお待ちしております。
長谷川利行バナー
どこへ行っても暑さが付きまとう夏。
作品をのんびり眺めつつ、
この暑さをしばし忘れるというのも良いかもしれません。
(水科)

神を父 仏を母に

新入社員の三浦と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
先日、友人と二人で熊野大社に行って参りました。
といっても、奈良の五條からバスにゆられて行きましたので、大半が移動時間で
熊野大社には1時間いたかいないか…。
ですがバス旅も中々おつなもので、普段あまり体感できない深い緑のなか、途中で温泉にも入りつつ熊野への旅路を楽しみながら窓の外をみると、所々で土砂崩れがおきているのを目の当たりにしました。
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いつぞやの大水害の爪痕か、はたまた別の原因があるのか分かりませんが、川向こうの道路が所々土砂に埋もれておりました。
日本にいる以上災害とは切れぬ縁ながら、どことなく苦い気持ちでバスを降り歩いて行くと、地元の食堂から何やらいい匂いが…。
中を覗くと昼時のせいもありなかなかの賑わいで、家族経営なのか中学生くらいの男の子が2人、元気に店を手伝っている様子。
大勢のお客さんたちに交じり温かい釜飯をいただきながら、頑張って働く姿を見ているうちに自然と笑顔になり、店を出る頃には来た時よりも明るい気分で再び旅路についておりました。
そんなこんなで景色を楽しみ食を味わい日本一高いと言われるつり橋で吊り橋効果のほどを試し…
やっと熊野大社に降り立つと、重厚感のある鳥居と八咫烏が。
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聞けばこちらの本宮もまた水害にあい、旧社地・大斎原(おおゆのはら)から現在の場所に移ってきたとのこと。
しかしまるで大昔からそこにあったかのような鬱蒼とした参道に迎えられ、四柱をお参りした後にはなにやら清々しい気持ちになって熊野大社をあとにしました。
「神を父に仏を母に」、困難を乗り越え生き続けてきたお社は、何かに見守られているような、自然と優しい気持ちになることができる場所でした。
ちなみに入り口前でお餅を売っているお店も災害で店舗をなくし、現在仮店舗で営業中とのこと。
それでも元気にご商売をされており、声などかけられてしまっては断れないと自分に言い訳しつつ、美味しく頂きながら、お社を後にする頃には何だか疲れも吹き飛んで帰路についた休日でした。
(三浦)