柴田是真の芸術

6月6日まで承天閣美術館で開催されていた
「柴田是真の漆×絵」展を見に行きました。
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アメリカ・テキサス州の収集家
キャサリン&トーマス・エドソン夫妻のコレクションの初里帰り展。
海外コレクターの里帰り展は近年よく行われていますが、
コレクションというくくりで見る美術品は、
ジャンルに関係なく、その収集家の視点の個性が作品を通して
よく表れているので、見ていて二重に楽しめます。
今回の展示では、柴田是真自身の芸術もさることながら、
海外のコレクションらしく、個性豊かな作品の数々を鑑賞できました。
都のミヤビをせせら笑うかのような、とんがったデザイン。
自然の生き物たちにそそがれる、惜しみない愛しみの眼。
見る物をだまそうと試みる、子どもみたいな茶目っ気と心意気。
挑戦的でありながら、そこはかとなく優しい彼の芸術と
コレクターの視点双方に、大変好感を持ちました。
ちなみに承天閣美術館は、靴を脱いで上がるので、
夏場は足もひんやりして、気持ちよく観覧できておすすめです。
(大地)

没後10年-小倉遊亀を偲んで

もう10年も前のことになります。
夏のまだ蒸し暑い夕刻、
鎌倉を訪れた私の眼に飛び込んできたのは、
色とりどりの絵がほどこされた“ぼんぼり”の列でした。
鎌倉の鶴岡八幡宮では、毎年8月上旬の3日間「ぼんぼり祭り」が行われています。
段葛から八幡宮の境内まで、ずらりと並んだぼんぼりの数は400以上と言われています。
なかには、鎌倉ゆかりの著名人が寄せた作品も多く含まれています。
その年のぼんぼりの列の一番奥の一際目立つ場所におかれていた2体は、
小倉遊亀平山郁夫の作品でした。
その2週間ほど前に、小倉遊亀は105才で亡くなったばかりでした。
当時、日本画家の名前を数えるほどしか知らなかった私が、
遊亀の作品であることがわかったのも、その記事を新聞で読んでいたからでした。
ひょっとしたら絶筆であったかもしれないそのぼんぼりの前で、
ものさびしい気持ちと、ここで出会えてよかったという安堵感のようなものが
入り交じった不思議な感覚になったことを覚えています。
以来、遊亀の作品を目にすると、決まってあの夏の日のことを思い出します。
現在、兵庫県立美術館では
「没後10年 小倉遊亀展-とうとう絵かきになってしまった」が開催されています。
凛とした女性たちや、遊亀が鎌倉のアトリエで描いた
身近にあった素朴で美しい花々や器など、計100点の作品が展示されています。
クレヨンを手に握った幼い少女が、画用紙を片手に何かを描いている
初期の作品「首夏」は、幼い頃の遊亀の姿でしょうか。
幼い頃から絵が大好きだった少女が、ひとりの画家になっていく過程。
小倉遊亀のまっすぐな生き方を、展示された作品から感じ取ることができます。
(西川)

鏡花本の世界

別冊太陽 泉鏡花 美と幻影の魔術師 (別冊太陽 日本のこころ 167) 別冊太陽 泉鏡花 美と幻影の魔術師 (別冊太陽 日本のこころ 167)
(2010/02/23)
別冊太陽編集部

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『別冊太陽』をご存じでしょうか。
平凡社から発行されているムック本で、日本の美術家を特集することもしばしば。
2月に刊行された『別冊太陽』のテーマは泉鏡花でした。
→ 平凡社ブログ「別冊太陽『泉鏡花』」
このなかに、「麗しき鏡花本の世界」という特集が組まれています。
鏡花本とは、鏑木清方橋口五葉・鰭崎英朋など鏡花の文学に魅せられた
画家たちによって描かれている、美しい装丁のほどこされた本のことです。
『別冊太陽』では写真を多く使って、鏡花本の魅力を余すところなく伝えています。
中でも、小村雪岱が手がけたものは、表紙・見返しを見ただけで
十分に魅了されてしまいそうな美しさです。
雪岱は、鏡花から雅号を授かり、代表作『日本橋』以後の装丁の多くを担ったそうです。
2月の『芸術新潮』では、小村雪岱の特集が組まれています。

芸術新潮 2010年 02月号 [雑誌] 芸術新潮 2010年 02月号 [雑誌]
(2010/01/25)
不明

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古美術ミステリ

ミステリ作家の北森鴻さんが亡くなられました。
まだお若かったのに、本当に残念です。心からご冥福をお祈りします。
さまざまな佳作(特に、連作短篇には名品が多いです)を生み出した北森さんですが、
「冬狐堂」シリーズは古美術業界を舞台にしためずらしい作品です。

狐罠 (講談社文庫) 狐罠 (講談社文庫)
(2000/05)
北森 鴻

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狐闇 (講談社文庫) 狐闇 (講談社文庫)
(2005/05)
北森 鴻

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緋友禅 (文春文庫―旗師・冬狐堂 (き21-4)) 緋友禅 (文春文庫―旗師・冬狐堂 (き21-4))
(2006/01)
北森 鴻

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「旗師」と呼ばれるひとたちがいます。
店を持たず風呂敷ひとつで商売する古美術商のことです。
冬狐堂こと宇佐美陶子は、腕利きの旗師。
しかし、あるとき贋物をつかまされ、そこから事件に巻き込まれていきます。
このシリーズで、古美術業界の恐ろしさを知ったというかたは多いようです。
私も入社する前に読んで、なんて怖い業界なんだ…と思ったくちです。
実際のところは、小説に出てくるような騙しあいが日常茶飯事というわけではありませんが、
頭のよく回るかたが多いのも、この業界だと思います。
少しダークな古美術の世界へ、どうぞ。
(岸本)

虎と竹林

みなさま、こんにちは。社長の田中です。
前回の大地さんのブログに引き続き、今年の干支「寅」について少し。
日本には昔から虎にちなんだお話があります。
一休さんのとんちには、屏風に描かれた虎が出てきますし、
加藤清正は虎退治で有名です。
城やお寺の襖絵に、虎の図が描かれているのを
目にされたことのある方もいらっしゃるでしょう。
虎の生息しない日本に住む我々にとっては、
大陸から伝わってきた勇壮な虎の姿は、
一種の夢物語として伝えられてきたのかもしれません。
絵図で「虎」といえば「竹」ですが、
この組み合わせは古くから描かれてきました。

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